「階級社会」に突入した日本、格差を拡大させた3つの仮説豊かさは「どの階層に属するか」で決まるこうの・りゅうたろう/横浜国立大学経済学部卒業。1987年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。97年第一生命経済研究所を経て、2000年BNPパリバ証券。歴史観を踏まえたマクロ分析に定評がある。

河野 80年代以降の日本で格差拡大が始まった時期には、グローバルでも格差が拡大していました

 高度成長が終わった段階で、世界各国はその高い成長が続くという幻想の下で、財政政策や金融政策を積極化しました。その結果、70年代は高インフレとなりました。

 財政・金融政策では成長を高めることはできないといって、規制緩和を進めたのが、米国のレーガン大統領、英国のサッチャー首相、そして日本の中曽根康弘首相らです。私自身は経済の実力である潜在成長率を高めるためには、規制を取り除いて、ある程度、経済を自由にするのはいいことだと思っています。ただし、彼らは同時に所得分配を弱体化させました。

 規制緩和をすることで潜在成長率(景気循環の影響を除いた経済成長率)を高めることはできますが、経済活動を自由にすれば格差は広がるので、自由化を進めた上で、所得分配で対応すべきだったところを逆にその機能を弱めてしまった。実際、どこの国も80年代以降、潜在成長率は上がらず経済格差だけが拡大しました。

橋本 今から考えると最悪のタイミングだったと思います。ちょうど格差が広がったころに、新卒も含めて非正規雇用が拡大。そこで所得分配機能を弱めてしまった。その後、格差の拡大に拍車を掛けることになる。

 非正規は雇用の調整弁といわれてきましたが、近年の動きを見ると、景気変動と非正規労働者の増減に相関はないですね。雇用の調整弁ではなくて、企業が収益を上げるために、構造的に組み込まれた要素になっていると思います。

【仮説(1)】
超人手不足なのに賃金が上がらない

河野 実は、17年はもう少し賃金が上がると思っていたのです。非正規の時間当たり賃金は2%台までは上がりましたが、その後、伸び悩んでいます。

 完全雇用なのに賃金が上がらない理由の一つは、高齢者や主婦の労働参加が高まり弾力的な労働供給が増えているからです。そうはいっても団塊世代が70歳になり始め、健康寿命を考えると労働市場から退出する人が増えると思っていたのですが、なかなか賃金が加速しない。