14日まで開かれていた中国の全人代で、10年近く掲げていた経済成長率8%の旗を降ろし、7.5%を目標とすると発表された。狙いはインフレの抑制、環境負荷の軽減、貿易依存度の引き下げにある。だが、バランスのとれた安定成長を実現するには、雇用の吸収、バブル崩壊の防止、元の自由化など難題を乗り越えなければならない。(在北京ジャーナリスト 陳言)

 日本の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が、今年は3月5日から14日まで開かれた。日本と比べて会期は非常に短いが、ここでは集中的にいろいろな審議を行う。その中でもっとも注目されるのは、経済成長率の引き下げとその影響である。

「保8」政策の終了に
シーンとなった会場

 初日の5日には温家宝首相が「政府活動報告」を行った。2012年の経済成長率の目標を7.5%に設定するというくだりが温首相の口から出てくると、テレビに映った全人代の会場はシーンとなった。10年近く死守した成長率8%以上という「保8」政策が、今年で終了することとなったからだ。

 実際、中央政府はいつも低めの成長率を設定する一方、各地方政府は8%以上の高い率を設定して、2000年以降、成長率は8%以下に落ちたことはなく、さらに03年以降はずっと二桁の成長を実現してきた。今年は本当に7.5%の成長率に収まるのか。それより高い、8%か9%の可能性はまだ十分残っていると予測する中国のエコノミストは今もかなりいる。

 中央政府は「保8」を捨てて、これ以上のインフレ、環境問題の悪化に、ある程度の歯止めをかけようとしているだけで、経済の高度成長を放棄したわけではない。

「1%の引き下げは、100万人の失業者が出てくることを意味する」と、「保8」の際によく使われていた中央政府の報道官の言葉は、未だに人々の耳元で響いているはずだが、「曲がり角では車の速度を下げなければ、どんな結果が出るか」と、王岐山副総理は代表討議の場で発言した。