今回は前回の山梨県に続いて、内陸県である岐阜県の料理だ。
岐阜は地理的には県南の美濃地方と、県北の飛騨地方の、大きく2つの地域に分かれる。
今回は、その標高3000m級の飛騨山脈を中心とした山岳地帯で、独自の文化を持つ、飛騨地方の料理を食べてみようと思う。
向かったのは神田小川町にある、飛騨居酒屋を謳った店だ。ランチで一度訪問したことがある『飛騨居酒屋 蔵助』。ここのランチで提供される『朴葉みそ焼き定食』は、ご飯がとても旨く感じて、茶碗に大盛りに盛られたご飯があっという間になくなったことを思い出した。今回も〆はもちろん朴葉味噌と心に決める。
店長の仲谷さんは飛騨市北部の神岡出身で、神田は小川町で7年間居酒屋をやっている。メニューは出身地でもある飛騨の名物ばかりである。岐阜県の交流会などのイベントも開催しているということだ。
「まずはツマミから、徐々に行きますか…。このこも豆腐というやつと、漬け物と、まめつかげを下さい!」
夜のメニューは東京ではあまり馴染みのないものが並んでいた。その中でも、ツマミになりそうな物をまずは3品ほど頼んだ。
やや固めの食感に、
出汁が染みこんで旨い「こも豆腐」
『こも豆腐』はわらで作った簀子(すのこ)に豆腐を包んで茹でたものを、出汁などで味付けしたものだ。飛騨地方の伝統料理で、もともとは冬場にタンパク源を取るための保存食だが、日常の食事だけでなく、めでたい席や、おもてなしの料理としても食べられる。
豆腐の中身に“す”が入っているところに出汁が入り込んで、高野豆腐と普通の豆腐の中間のような食感と味わいだ。これがさっぱりとしていて旨い。
「出汁の味がよく染みていて、いいなぁ。このちょっと固めの歯応えもいい」
そして、真っ赤な漬物がでてきた。『赤カブと大根の漬物』だ。
「うん。まさに赤いね。しかも、デカイかぶだなぁ」