“がん=退職”ではない時代の到来、テルモの「がん就労支援制度」写真はイメージです

現在、がんに罹患した人の就業継続の問題がクローズアップされている。がん罹患者は年々増加しており、2012年にがんと診断された人のうちの3分の1は20歳から64歳の労働生産年齢層。その多くの人が仕事を続けていきたいと望んでいる。企業にとって、そうした従業員をいかにサポートするかは大きな経営課題だ。2017年1月に「がん就労支援制度」を制定し、治療と就労の両立をサポートしているテルモに話を聞いた。(ライター 井上明美)

がん患者の34%が退職している実態

 2016年12月にがん患者の雇用継続への配慮を事業主に求める改正がん対策基本法が成立するなど、近年、がん患者の就労問題ついて議論が活発化している。2014年1月に実施された「第1回がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」の資料によると、仕事をしながらがんの通院治療を行っている人は2010年の段階で32.5万人。その一方、勤務していた企業を依願退職した、解雇されたという経験を持つ人が34%いるという資料がある。

 がんの治療と仕事の両立を難しくしている要因は、がん特有の重篤性、再生リスク、それによる治療の長期化にある。企業としても、休業中の賃金支給などの金銭的な補償、代替要員の確保、柔軟な勤務制度の整備など、さまざまな課題があり、必要だと認知しながらも支援に乗り出せないという現状がある。そこで、すでに定めている育児・介護や私傷病時の休業等の制度内で運用している企業も少なくない。しかし、それで充分だろうか。

 テルモもかつては私傷病時の休業等の運用で対応してきたが、社内にがんの罹患者が増えてきたことで、がんの特有性に合った制度の必要性を感じたという。そこで導入したのが、がんに特化した「がん就労支援制度」だ。