「ゆでる」「蒸す」で最高のものを引き出す

 しかし調理に関して最悪の問題は、含有される脂肪を酸化させて台なしにすることだ。脂肪の中でもとりわけ不飽和脂肪酸は非常に傷みやすい。本書で既述したとおり、熱や光にでもさらされるとダメージを受けやすい。

 あとでこうした問題の原因となる具体的な調理法を検討していくが、まずはダメージを受けた脂肪が体に何をするかを見ておこう。

 ダメージを受けた脂肪を摂取したとき、体はまだそれを細胞膜を作るために使う。ご存じのように脳はほとんど脂肪でできている。ミエリン(髄鞘)もほとんど脂肪でできている。ホルモンもほとんど脂肪でできている。そしてミトコンドリアは脂肪に頼って機能している。

 脳の細胞膜と残りの全身がダメージを受けた脂肪で作られたとき、これらは柔軟性と機能性が低下する。ニューロンは効率的にメッセージを送ったり受け取ったりできなくなる。ミトコンドリアは劣化しはじめる。

 酸化した脂肪はホルモンや神経伝達物質のシグナルも攪乱する。その一つが、ニューロンを興奮毒性死させるグルタミン酸を過剰に生成することだ。

 さらに、酸化した脂肪の最大の問題は、炎症性の高さである。ダメージを受けた脂肪の分子が体の材料として使われるとき、酸化ストレスが生じる。本書5章で見たとおり、多価不飽和脂肪酸が最もダメージを受けやすい種の脂肪だ。これらのオイルは熱せられたときに、特に脳にとって毒である「ジカルボニル」という化合物を生成する。

 これはミトコンドリアを損傷し、酸化ストレスを引き起こす(*7)。ジカルボニルは終末糖化産物(AGE)の前駆体でもある。AGEは前述のとおり、炎症を起こし、酸化ストレスをいっそう悪化させる(*8)。

 おそらくこれが、僕が低炭水化物・高脂肪・ケトジェニックダイエットで約23キロ減量したあとで体調が悪くなりだした主な理由だろう。僕はかりかりに焼いた豚の皮のような料理を食べていて、一日中アスパルテームのような毒性のある化学物質を摂取していた。そして体重を減らし、ケトーシスを保ちながら、気づかないうちに全身に炎症を起こしていた。

 僕はこれを、炎症性の食品および化学物質を食べることを許すケトーシスのダイエットで何度もくり返し見てきた。食べる脂肪の種類こそが大切なのだ!

 幸いにも、人体の細胞内の脂肪の半分は2年ごとに入れ替わる。あのダメージを受けた脂肪はだいぶ前に僕の細胞膜から去っていて、僕は脳で違いを感じることができる。僕はいまだに脂肪をたくさん食べているが、高温では調理しない。

 脂肪の調理は低温で、ゆでるか蒸すことにして、酸化ストレスを相殺するべく大量の抗酸化性のスパイスを使う。これは多くの人が考えることじゃないが、毎日のパフォーマンスにきわめて大きな違いをもたらしてくれる。

 以下は、脂肪の調理にかかわる重罪犯たちだ。