アスリートの選手生命は短いことから、引退後のセカンドキャリアは大きな問題となってきた。朝原宣治氏は、この問題に地域スポーツという1つの答えを見出して実践してきたという。前編に続き、コンサル先の学校で教師の長時間労働問題に直面している小室淑恵・ワーク・ライフバランス社長が、部活が抱える課題を朝原氏にぶつける。(まとめ/アスラン編集スタジオ 渡辺稔大、撮影/内藤洋司)
アスリートのセカンドキャリアは
メジャースポーツのほうが大変?
小室 ここからは、アスリートのセカンドキャリアの話もうかがいたいのですが、海外の状況もご覧になって、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
朝原 これは、いまだに非常に難しい問題です。本当にマイナースポーツで、「そのスポーツでは食べていけない」のが明らかな競技はむしろ大丈夫です。将来のことを考えながら競技をしているから。
1972年、兵庫県生まれ。高校時代から陸上競技に本格的に取り組み、走り幅跳び選手としてインターハイ優勝。同志社大学在学中に、国体100mで10秒19の日本記録樹立。 大阪ガス株式会社に入社、ドイツへ陸上留学。初出場の1996年アトランタオリンピックの100mで準決勝に28年ぶりに進出。4度目の参加となった2008年北京オリンピックの4×100mリレーでは、36歳にして悲願の銅メダル獲得。 2010年に陸上競技クラブ「NOBY T&F CLUB」を設立。自身のキャリアを活かした社会貢献活動に取り組んでいる
小室 常に引退後を考えているのですね。
朝原 そうです。陸上は結構中途半端です。オリンピック種目でもあるし、最近は人気もあるので、企業に採用してもらえることもある。でも、ただのスポンサー契約の場合、競技生活が終わると契約もそこで終わってしまう。自分で新しく仕事を探さないといけないんです。
小室 ドイツでは、競技引退後に国家資格を取得して、地域の人たちを指導する流れが定着しているとお聞きしました。そういう仕組みは、日本社会にも必要ですよね。
というのも、私は最近、公立の小中学校をコンサルする機会があるのですが、今中学校の先生の6割が過労死レベルの労働時間で働いています。その大きな要因が部活の顧問なのです。
朝原 それ、スポーツ界にも影響のある大きな問題ですね!