しかし、実は悪いことばかりではなかった。需要家が一致団結して節電・ピークシフトに励んだ結果、2011年夏の供給力不足は大きな混乱なく克服できた。これまで電力会社は、需要側の対応力(デマンド・レスポンス)には期待できないと説明してきたが、大きな可能性があるということが証明された(図表1)。

 とはいえ、現実には大口需要家の負担は大きかった。企業によっては、自家発電機の増設やその燃料費の増加により、数億円規模の負担がかかったという。そのため2011年の節電は、3.11を受けた緊急事態における需要家の例外的な対応であり、今後は期待できないとの声もある。確かに、一律15%削減義務付けといった画一的なやり方を続ければ、誰もレスポンスしてくれなくなるかもしれない。しかし、十分な需給情報とインセンティブを与えれば、需要家は自ら考えて積極的に需給調整に協力してくれるのではないか。これが、スマートグリッドの基本的な考え方である。

集中管理型から自律分散型へ

 筆者は、これまでの日本の電力システムを「集中管理型」と呼んでいる。限られた数の電力会社が、発電から送電、配電、小売りまでシステム全体を一手に引き受ける。原発に代表される大規模発電所を過疎地に集中立地し、合わせて高圧送電網や揚水発電も一体的に建設し、制限なく需要家に送り届ける。市場競争がないから相対取引で認可料金が当たり前で、需要家が電気料金を払う対象も電力会社になる。安定供給責任は全面的に電力会社に課されるため、電力会社は十分な供給力を持てるよう過剰投資も厭わず、それは総括原価方式の料金により確実に回収される。

 集中管理型システムの最大のメリットは、需要家は何も考えなくても良いということである。冒頭で選択肢がないことを批判したが、実はそれは何も悩む必要がないということであり、慣れてしまえば心地よかった。

 と同時に、日本の停電時間は世界で一番短いこともよく指摘される。これについては、電力会社の日々の努力を率直に評価したい。だが、それが発送電一貫体制、とりわけ地域独占のお陰だとの意見には同意できない。地域単位で需給をバランスさせるという、ネットワークの力をまるで活用しない仕組みだったからこそ、計画停電が避けられなかったのだ。また、上記の通り、電力会社は地域単位で過剰投資をしてきたからこそ、電気料金の水準も日本は未だに世界一なのである。