ソニーがウェアラブルネックスピーカー「SRS-WS1」を発売して半年が過ぎた。最近、テレビ番組で紹介されて人気となり、いまでは品薄で手に入らない状態らしい。発売当初、直販で2万6870円程度の製品が、Amazonなどではなんと6万円を超える価格で売られている。

 奇しくも近いタイミングで、BOSE、JBLと、首かけ式スピーカーが立て続けに発売された。今回はそのうちの一つ、BOSEの「SOUNDWEAR COMPANION SPEAKER」を試してみた。公式通販価格で3万4560円。いま無理にSRS-WS1を買うより安い。

BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う

Bluetoothイヤフォンと変わらない使い勝手

 SRS-WS1との大きな違いは、ワイヤレス接続の仕様がBluetoothであること。SRS-WS1はテレビ専用とも言えるデザインで、ゲームや映像視聴での音の遅延を抑えるため、専用のトランスミッターを使って接続する。その点、BluetoothのBOSEは、スマートフォン用ヘッドフォンの代わりにもなり、場所を選ばず使える。

 実際、使い勝手はいまどきのBluetoothイヤフォン、ヘッドフォンと変わらない。充電はUSBでフルチャージまで最大3時間。持続時間は約12時間で、15分の充電で最大2時間使えるという省電力設計。内蔵マイクで通話やSiriなどへの音声コマンド送信に対応。着信を知らせるバイブレーター、曲の再生停止や送り戻し、音量操作のボタンも当然ある。

 メリットは、耳をイヤーパッドで覆ったり、イヤーチップを挿入したりの異物感とは無縁であること。そのかわりに、ドライバーの指向性もごく一般的なスピーカーと変わらないので、開放型のヘッドフォンより音漏れはする。だから使う場所と音量は考えなければならない。

カバーは着脱式

 スピーカーの外側は、ファスナー付きの合成繊維とビニールのカバーで覆われ、交換可能。標準装着の黒に対して、ミッドナイトブルー、ダークプラム、ヘザーグレーのオプションもあって、それぞれ3780円。外したカバーは、脱皮したヘビの皮のようで、一見して音響機器のパーツとは思えないのがおもしろい。内側には洗濯表示マークも見られる。

BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う
BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う
BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う

研究された装着性と防水性能

 裸にしたスピーカー本体の表面はグレーのシリコン。ドライバーのメッシュカバーと共鳴管のダクトが左右に空いているが、これでIPX4準拠の防水性能もある。ネックバンド部には、明和電機の「魚コード」のような部材が見られ、ふにゃふにゃと柔らかい。横やねじれ方向にも動き、形状記憶性があり、着脱は容易だ。

 重量はカタログ値で260g。ソニーの本体335g+バッテリー22gに比べると100gほど軽い。実際、初物でありながら本体の形状も含め、かなり研究されているようで、どこかに当たって痛みを感じることもなかった。

BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う
BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う

この形でも音はBOSE

 音に関しては、このサイズ、形状であっても安定のBOSEクオリティー。低域はしっかりブーストされ、分厚く派手に鳴りまくる。スピーカーが上を向いていることで、直接音が耳に届くために、高域側の解像感やレンジの広さも確保されている

 とはいえ、BOSEの技術をもってしても、いつものようにローエンドから持ち上げるのは難しかったのだろう。低域の量感を演出するために、ボーカルのオクターブ下くらいの帯域まで持ち上がっていて、これが人の声をマスキングする。

 気になる場合は、BOSEのスマホ用アプリ「BOSE CONNECT」から「ダイアログ調整」でカットできる。カット量は0から-8まで選べるが、私は-2くらいが適当に感じた。このアプリはスピーカー本体のファームアップにも対応するので、ぜひインストールしておきたいところ。

BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う

違いは低域の演出と音場感

 SRS-WS1との違いは、低域の演出と音場感にある。ソニーはボディーソニックのように、振動として低域の成分を身体に伝えてくる。ゲームや映画の効果音とは相性がいいが、音楽には若干の違和感をともなう。低域の量感が伝わってはきても、ベースの音程のような情報はつかみにくいからだ。対してBOSEはあくまでも空間を伝わる音として低域を聞かせようとする。だから音楽を聴くならBOSEの方がより自然だ。

 しかし、音場についてはソニーに分がある。ドライバーを横向きにマウントしスリットで拡散するなど、ソニーが定位の広さに配慮した設計なのに対し、BOSEは首の周りだけで音場が完結しているような狭苦しさがある。ドライバーが上を向いているBOSEは、ドライバー開口部に髪がかかると吸音材として働いてしまい、ハイ落ちする難点もある。

 Bluetoothの遅延も、やはり大きい。動画の再生にはほとんど問題を感じないが、ゲームでは入力に対する効果音のタイミングが相当ズレる。この点は公式サイトのQ&Aでも明言されているくらいで、リアルタイム性のあるゲームには向かないと考えた方がいい。

屋外での利用シーンを考える

 Bluetoothでどこでも使えるとは言っても、利用シーンは限られる。音が盛大に漏れるので、電車はダメ。自宅でも居間では使えず、結局個室で使うことになる。だったらスピーカーかヘッドフォンでいいじゃないかということになってしまうのだ。

 だが、このBOSE製品の仕様を見て使えそうだと思ったのは、郊外でのサイクリングだ。特に防水性能を持つのは、この製品だけ。アウトドアユースならこれ一択ということになる。

 ただし、公道で使う場合は注意がいる。イヤフォンやヘッドフォンのように耳をふさがないのでオーケーかといえば、そうではない。道交法や条例の趣旨からいえば「交通に関する音又は声が聞こえないような状態」が問題なのであって、スピーカーでも音量を上げすぎると指導の対象になる。

※ 北海道の場合は道路交通法施行細則第12条7項に規定がある

 試しに河川敷のダートをシクロクロスで走ってみた。強い向かい風を受けると音は聞こえにくいし、前傾姿勢を取ると肩から浮いてブラブラ動き始め、姿勢を変えると落としそうになる。もちろん自転車用に設計されているわけではないので、難点はあって当たり前。

 それ以外の状況では、タイヤが砂利を踏む音、鳥のさえずりなどを聞きながら、十分に音楽も楽しめた。ラジオを大音量で鳴らしながら走る人もいるが、首かけ式はそこまでの音量にはならない。着信があっても止まってスマートフォンを取り出さずに済むし、普段はためらわれる音声での選曲操作も、今回初めて便利だと感じた。

 ほかにもガレージでの作業や庭仕事など、両手がふさがっている状態ではスマートスピーカーの代わりとして使えそうだ。今回試すチャンスはなかったが、オープンカーのヘッドレストスピーカーの代用にもなるのではないか。

 ところで、このレビューを書いている最中に、JBLの新製品「SOUNDGEAR」の実機が届いた。装着性、音の作り込みなどソニーやBOSEとも異なり、おもしろい。これも近いうちにレビューとしてまとめたい。

BOSEとソニーの首かけスピーカー、テレビか音楽で選び方が違う

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四本 淑三(よつもと としみ)

北海道の建設会社で働く兼業テキストファイル製造業者。