入社式で引っかかったところ
4月2日、日本では大手企業で入社式が行われたようだ。いわゆる「入社」というものを経験したことがなく、履歴書やエントリーシートも書いたことのない私には無縁な話で、入社式関連のメディア報道を興味深く見ていた。しかし、どうしても引っかかる点があった。
社長の訓示でもっとも多かったのが、新入社員に「グローバルに通用する実力をつけてほしい。外国語を早期に習得することだ。期待している」という内容だ。
日本経済新聞電子版ニュース(2012年4月2日『「グローバル化」「危機感」強調 入社式でトップ訓示』)によると、4月1日に就任したシャープの奥田隆司社長は「日本のエレクトロニクス業界は非常事態ともいえる厳しい状況。皆さんも自らグローバル競争に打って出て次の成長を確かなものにしよう」と新入社員に呼びかけたという。また、三菱重工業の大宮英明社長は「従来以上に海外市場で戦わねばならない」、キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長は「すべての物事を国際的な視点から考えることができる『国際人』になってほしい」、三菱商事の小林健社長は「世界の動きを敏感に察知する感性を磨いてほしい」と訴えたそうだ。
大手企業を中心に、グローバル化の流れを敏感に察知し、社内変革につなげるムーブメントを起こそうとすることは大いに歓迎すべきことだ。各社社長の力強い言葉を聞いて、私は感動のあまり身震いした。
社長のグローバル度は?
しかし、ここで考えてみよう。“グローバル化”は少なくとも十数年前から各企業の経営課題として挙げられてきた。電機メーカーは、中国やインドなどの新興国でのAV製品のシェアで、韓国サムスン電子やLG電子に負けている。ここまで自社の業績や世界的なブランド価値の低下を招いたのは、自然災害や金融危機を含めた内外の情勢に左右された側面もあることは否めないが、現在、会社の中枢で意思決定に深く関わってきた経営陣が、事業のグローバル化に対応し切れなかったことが原因であることに疑いの余地はない。
大学を卒業したばかりで、社会人経験ゼロの新入社員に“グローバル化”を求める前に、社長自らがグローバル化している姿を行動で示し、先導すべきではないのか。