離脱は中東に対立の悪循環をもたらす
原油価格高騰で世界にも影響

 米国の主張は核開発の規制自体が不十分であるとともに弾道ミサイル開発制限やテロ支援に対する措置がとられていないということだ。

 欧州諸国は米国の離脱に強く反対しながらも、弾道ミサイルなどの開発が続けられていることへの制裁措置の導入については検討をしていた。

 また核合意を監視するIAEAはイランが核合意を履行してきたことを確認しており、イランと英・独・仏・露・中は引き続き合意を維持していくと表明している。

 トランプ大統領は核合意前に行われていた制裁を復活するほか、新たに強力な追加制裁を近日中に発表するとしている。一定の猶予期間を過ぎてこれら制裁が実施されていけば、その影響は格段に大きい。

 一方でイラン国内ではそもそも核合意は制裁解除による経済的恩恵が十分享受されていないという国民の不満は強い。

 穏健派であるロウハニ大統領に対抗する強硬派は合意の破棄、核開発の再開に向けて勢いを増すのだろう。

 イランを実質上、支配するシーア派の最高指導者らが今後どう判断していくのか、場合によっては強硬派の意見を入れる可能性も高まる。

 だがイランが核開発再開となれば、湾岸諸国、特にサウジアラビアが核開発に向かう可能性が高まる。米国の核合意からの離脱はサウジアラビアやイスラエルを勢いづかせ、シリアを巡って鮮明となっているイラン・ロシア対サウジ・イスラエル・米国の対峙を深めることとなろう。

 イスラエルはイランに対して攻勢に出るだろうし、またこれまではイエメンなど第三国を舞台にしていたサウジアラビアとイランの軍事的対立が、今後、直接的な軍事対立に発展するのではと危惧される。

 米国の経済制裁が最も強いインパクトをもたらすのはイランの石油輸出だ。イラン中央銀行に対する制裁が再開されるとことになれば、イランの石油輸出は大きな打撃を受け、結果的には石油価格が高騰し、世界経済にも影響が及ぶだろう。

対北朝鮮へのメッセージだが
北朝鮮にどう映るのか

 イラン核合意の離脱発表と時を経ず、米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで開かれることが発表された。北朝鮮の核問題へはどのような影響を与えるのだろうか。

 トランプ大統領は「イランのような中途半端な合意を結ぶつもりはない」というメッセージを北朝鮮に与えることになると考えたのだろう。