一方で金正恩委員長にして見れば、「クリントン政権時代に、父の金正日総書記が合意した核開発凍結や査察受け入れ、米朝関係正常化といった『枠組み合意』が、その後、ブッシュ政権により忌み嫌われ、結局は、崩壊したのと同じで、やはりアメリカは信用できない」と考えるのだろう。

 2002年の小泉首相訪朝の際、筆者も随行したが、首脳会談で金正日総書記が顔を真っ赤にして米国は信用できないと激しく非難していたのを思い出す。

「非核化」を巡る米朝間の最大の争点はイランの場合と同じだ。

 米側にして見れば、果たして合意が忠実に遵守されるか、それを間違いなく検証していく手だてを持っているか、が最も重要な点だ。

 米国が言う「リビア方式」は、リビアによる核施設の申告、検証、米国へ輸送した上での廃棄といった順序を経て、制裁が解除されたのであり、北朝鮮にもそれと同等のスピード感や透明性、不可逆性を求めるものだ。

 一方で北朝鮮側は「米国は信用できない」という前提をとり、段階的に核廃棄を進め、各段階で体制護持を保障する結果につながるような措置が必要、と考えているのだろう。

 北朝鮮をここまで動かしたのはトランプ政権の軍事力を背景にした圧力であり、これに中国も加わり国際社会が結束した経済制裁の圧力だったことは間違いあるまい。

 しかし一筋縄でいくのかどうか。ここにきての状況を見ると、結束が崩れる可能性も少なくない。

中国やロシアはどう動く?
東アジアや中東で影響力強める可能性

 米国は昨年12月末に発表した「米国国家安全保障戦略」で、大国間の競争が復活したとする情勢認識をもとに、米国の「強さ」を通じて平和を確保する戦略を打ち出している。

 この中で、ロシア・中国は、テクノロジーやプロパガンダを利用して米国の国益に反する世界をつくろうとする「修正主義勢力」であり、イラン・北朝鮮は地域を不安定にする専制体制で、米国の安全を脅かす存在だと、位置づけ、力により対抗していくことを明らかにしている。

 つまり米国の認識の中で、「戦略的競合国」は中国であり、ロシアだ。

 トランプ大統領は北朝鮮問題については中国との協力を期待しながらも、対中貿易赤字削減で“貿易戦争”の戦端を開き、台湾問題で中国を牽制する行動に出た。