東京海上グループの中核企業、東京海上日動火災保険は、2004年の合併以降、システム投資に600億円超をかけ、「抜本改革」を進めてきた。その内容は、全国4万6000の代理店のオンライン化にはじまり、契約情報のクラウドへの集約、商品のシンプル化などに対応し、年間約100億円のコスト効果を生み出している。このプロジェクトを、当初は東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)のIT企画部長として立ち上げ、現在は東京海上日動システムズ社長として推進しているのが、横塚裕志氏だ。この改革の狙い、成功の理由について、横塚氏に聞いた。
情報はすべてクラウド上、
震災でも断なくサービス提供できた
――2011年3月に起きた東日本大震災では、大きな影響があったのでは?
被災地域では、代理店も被災されました。しかし、東京海上日動火災保険ではすでに、すべての契約手続きのペーパーレス化などを実施し、情報はすべてクラウド上に集約されていたので、契約のデータなどを消失させてしまうようなことはまったくありませんでした。ネットワークにつながるパソコンさえあれば、契約者様の情報にアクセスすることができるので、代理店としての業務を継続することができます。
当時は、約2000台のパソコンや携帯通信端末を臨時で手配し、そこからクラウドにアクセスすることで、お客様対応などを断なく行うことができ、5月の連休明けにはほぼすべての保険金支払い手続きが完了しました。
抜本改革の目玉だった100%のオンライン化には何年もかかり、非常に苦労したプロジェクトでしたが、災害にも強いことがよくわかりました。
――損害保険業界の中でも、代理店や営業所の100%オンライン化を行っている企業は珍しいと聞きます。
代理店は高齢の方も多く、当初抵抗は強かったです。プロジェクトを開始した2004年当時、4万6000店のうち約2万店は東京海上日動のオンラインシステムを使っておらず、その多くはパソコンを持っていませんでした。