日本人の名字は極めて数が多い。公式な統計がないため正確な数はわからないが、少なくとも10万以上あるのは確実。読み方の濁点のありなし(山崎の「やまさき」と「やまざき」)の違いや、微妙な異体字の違い(山崎と山〓[<山>へんに<立>+<可>]など)までカウントすれば、その数はかなり増える。もちろん1家族だけしか名乗っている人がいない名字もあり、中には一見名字とは思えないようなものもある。そうした名字の中から、今回は「おめでたい名字」を紹介したい。
おめでたい名字で多いのが
「吉」「福」「神」
おめでたい名字というと、どういう名字を思い浮かべるだろうか。
神(かみ)、宝山(ほうざん)、宝積(ほうしゃく)、福来(ふくらい)、幸福(こうふく)、大金(おおがね)、門松(かどまつ)、繁昌(はんじょう)、出世(しゅっせ)、福袋(ふくぶくろ)、善積(よしづみ)、永久(ながひさ)など、おめでたい名字は多い。中でも多いのが、「吉」「福」「神」を使った名字だ。これには理由がある。
昔の人は言葉を大切にした。「言霊(=ことだま)」という言葉があるように、言葉には魂が宿っており、不吉な言葉は不吉な未来を呼び込む可能性がある。そのため、未来につながる家の名字にはできるだけいい言葉を使用するのが基本だ。
かつて川辺に茂っていたアシ(葦)は、「アシ」という言葉が「あし(=悪い)」に通じるため、西日本では「ヨシ(=好し)」と言い換えることが多かった。そこから、アシの茂る原は「ヨシハラ」となり、この「ヨシ」に「吉」という縁起のいい漢字を当てて「吉原」と書いた。「吉原」さんはこれに由来する。