軍法会議は
なぜ必要なのか?

 戦時の敵前逃亡が厳罰に処されないのであれば、規律が徹底されているとは言い難いだろう。また、自衛隊は、もともと戦うことを前提としていないため、仮に北朝鮮などと交戦状態になった場合、すべてが「超法規的措置」とされてしまう恐れもあるという。

そもそも軍法会議とは「軍刑法を適用して主に自国軍人を裁く法廷」のこと。日本に陸軍裁判所、海軍裁判所という、いわゆる軍法会議が初めて設置されたのは、建軍間もない1872年(明治5年)だが、敗戦後、日本軍の解体とともに、1946年(昭和21年)に廃止されて現在に至っている。

 軍刑法は「一般の司法から独立して、軍内部の犯罪などを裁く法律」を指す。霞氏によれば、軍刑法の目的は大きく2つあるという。

「まずは軍隊そのものの規律を正すこと。そのため、一般の刑法よりも厳しく罰せられます。そうでなければ、国防を担う軍隊に対する国民の信頼も損なわれ、存在意義も失われるからです。次に、軍人が国民に対して銃を向けるといった、一般の刑法で想定していない事態を裁く、いわばストッパーの役目があります」

 軍法会議を設置するには軍刑法に加えて、軍法会議法という法律も必要になる。

「軍刑法、軍法会議法、そして軍所属の法曹の存在。これらをまとめて、軍司法制度といいますが、軍法会議を設置しても、車の両輪の関係ともいえる軍刑法、軍法会議法がなければ機能しません。そのためこの3つの制度が同時に動くように進めなければいけないのです」

 通常の司法制度にたとえると、まず刑法がある。次に、刑法によって定められた犯罪を犯したと疑わしき人間は刑事裁判にかけられる。その裁判の手続きは刑事訴訟法に基づいて行われている。この一連の流れを軍に対しても適用するというわけだ。

 軍隊を持つ国では、一般の司法制度と独立した形で、特別な軍司法制度が存在しているのが決して珍しくはない。