Facebookのポリシー担当最高プライバシー責任者(CPO)であるErin Egan氏が米国時間3月23日、企業などの雇用者に対し、Facebookのプロフィールや個人情報にアクセスするために、従業員および求職者にパスワードの開示を求める行為を行なわないよう警告するブログ記事を発表した。
これは、最近ユーザーから相次ぐ報告を受けたものだという。Egan氏は文中において、こうしたプライバシー情報へのアクセスを行なうと、法的責任に問われる可能性もあるとしている。
実際、雇用者が採用の際にFacebookのログイン情報の開示を求めた例はいくつか報道されている。たとえば、AP通信の3月20日付の記事によれば、Robert Collins氏は2010年、メリーランド州公安および矯正サービス局の警備員の仕事に復職するための面接を受けた際、Facebookへのログイン情報の開示を求められたという。
米国自由人権協会(ACLU)がこの件について苦情を呈すると、同局は情報開示を求める代わりに、面接時にログインを要求するようになったという。この他にも、政府機関がSNSへのログイン情報開示を要求した例は何件も報告されている。
また、サードパーティーによるFacebookのアプリを利用して、求職者の個人情報を入手している企業もある。たとえば米国の大手求職サイトMonsterはBeKnownを使って、雇用者と求職者を結び付けている。また、BranchoutやFind.lyは、求職者が「自主的に」個人情報や職歴をSNS経由で雇用者と共有するためのアプリである。大手デパートのSearsは、Find.lyを使っている企業の1つだ。ただしこれらのアプリは情報の共有は求めるが、パスワードの開示は求めていない。
Facebookの警告文を受けて、一部の州が従業員や求職者のプライバシーを保護する州法制定に動き出した。イリノイ州の下院は3月29日、雇用者が従業員に対しFacebookなどのログイン情報開示を強制することを禁じる州法を可決したほか、メリーランド州でも同様の法案が検討されている最中だ。
また連邦議会の下院でも、民主党議員が3月27日、雇用者が従業員や求職者に対しSNSなどのパスワード開示を要求することを禁じる権限を連邦通信委員会(FCC)に与える法案を提出したが、共和党議員が多数派を占める下院では否決された。ただし上院では、2人の上院議員が雇用者によるこうした行為が違憲かどうかを調査中であるという。
筆者の個人的な話で恐縮だが、Facebookでアプリを使おうとすると、「個人情報を共有することを許可しますか」という一文が表示されるのがどうしても気になり、サードパーティーのアプリはゲームも含めてできるだけ使わないようにしている。今回の問題を見るにつけ、実名登録が基本のFacebookの恐ろしさを実感した次第である。
Facebookの警告文から明らかになったこの問題。法による介入がない限り決着を見ないのだろうか。今後の行方に注目したい。
(岡真由美/5時から作家塾(R))