プライバシー情報が無断で取得される事例が相次いでいる。情報が広告を通じてカネになるからだ。しかし、保護する制度は未整備のままで、今の日本はやりたい放題といっても過言ではない。

アンドロイドマーケット上は有象無象のアプリがある。無料だからといってダウンロードするとその代償は大きい

 アンドロイド端末向けのアプリ販売サイトには、きれいな女性の顔写真がずらりと並んでいる。「セクシーな写真」と書かれて無料と言われれば、その甘い誘惑に負けてダウンロードしてしまう男性も多いかもしれない。

 しかし、このアプリをスマートフォンに入れてしまえば最後、途端にスマホ内の情報は根こそぎかっさらわれてしまう。

 一応、利用規約はあるが、申し訳程度の代物できちんと読む人などなきに等しい。

 その結果、位置情報から趣味嗜好、端末に自由にアクセスする権限までアプリ開発者らに与えていたのだ。

 つまり、ただの写真集だと思って眺めているうちに、端末の情報は開発者らへせっせと流されているというわけ。おかしいと気づいても「同意」しているのだから、後の祭りなのだ。

 こうして取られた情報が犯罪に使われるケースも出始めた。

 「動画を見ようとしたら、見知らぬアダルトサイトの画面が出て料金の請求が来た」

 今年1月、東京都内の消費生活センターに10代の男性から相談があった。よくある架空請求であれば、個人を特定したものではなく、単に無視すればよかった。

 しかし、今回は事情が違う。画面上には男性の電話番号とメールアドレスが表示され、業者から直にメールが届いているのだ。

 どうやら動画再生のために入れたアプリが原因で架空請求につながったと見られ、請求金額は約10万円に上った。

 犯罪とはいわないまでも、端末の情報が無断で使われている例は少なくない。

 KDDI研究所がアンドロイド端末向けの人気400本のアプリを調べたところ、全体の45%がなんらかの情報を外部に送信し、全体の6%がプライバシーを侵害しかねない状況だと判明した(図参照)。

 それが今、問題になっている。下図にもまとめるように、利用目的をきちんと明らかにせず、端末の識別番号と履歴情報を結び付けて取得してしまうケースは枚挙にいとまがなく、利用者から疑問の声が続出しているのだ。

 もちろん事業者側は「同意を取った」としているが、説明不足である面は否めない。事態を重く見た総務省も動き出した。今年1月にスマホの利用者情報の取り扱いに関する作業部会を設けた。

 プライバシーをめぐっては、1960年代からさまざまな議論が行われてきたが、これまでになかった問題が今、急浮上しているのだ。