──刀が経営に参加する場合、どのように仕事を進められるのでしょうか?

森岡 ビジネスが沈みかけている企業がご相談に来られた場合、まずは止血作業をしなければなりません。問題解決をして、流れ出ている血を止める必要があります。それと同時に、早い段階で組織の改革も行います。いくらマーケティングだけを強化しても、組織の構造が壊れていてはマーケティングが機能しないのです。

──どのような組織にするのが理想なのでしょうか?

森岡 その組織が達成したい目的を明確にすることがまず重要です。そしてその目的に対して、達成確率が高い組織を作ることです。実はどこでも通用する「完璧な組織」というものは存在しません。サッカーで言うなら「攻めを重視するのか、守りを重視するのか」のように戦略を考え、目的達成に最も適した組織に作り変えます。強みをどこに作り、わかったうえでどこに弱みを作るのかという選択ですね。現場力が強い会社は戦略が弱い、逆に戦略が強い会社は戦術が弱いということはよくあります。弱点というのはたいがい強みの裏側にあるものです。

 もうひとつは、一人ひとりの構成員の力を最も引き出せるのはどういう構造かということを考えます。

──企業が陥っている問題点で多いものは何ですか?

森岡 苦境に陥っている企業の多くは、神経回路が分断されています。問題を抱えている部署があっても、保身に走って重要な情報を上げない。だから社長にはどこに問題があるのかが見えない。

 知り合いのある大手メーカーでは、新製品調査で「総合評価」をあえて質問しないそうです。質問するのは研究開発に力を入れた一つひとつの細かい項目のみ。本来はその細かい項目が総合評価にどのような影響を与えたかを見ないと意味がありません。そこで質問票に総合評価を加えようとしたら、上司から厳しく叱られたそうです。「そんなことをしたら研究項目が総合評価に関係ないことが露見する。それが部として非常にまずいことがわからないのか」と。その上司にとって最も大切なのは、自分の組織を守ることなんですね。しかしそれは会社全体にとっては明らかにマイナスに働いている。