飲み会が終わった後、2軒目、3軒目と、店を変えて飲むのがいわゆるハシゴ酒。職場でもプライベートでも、店をハシゴして飲むのは当たり前だと思っている人は、中年以降の世代には多いはずだ。しかし、なぜ私たちはハシゴをするのだろうか。『飲み会=ハシゴする』という慣習によって思考停止になっていないだろうか。人がハシゴ酒をする理由とは何なのか、専門家に聞いた。(清談社 中村未来)

素を出すのに時間がかかる
日本人がハシゴ酒を好む理由

進んで参加すべきハシゴ酒の条件とは?
「課長」「部長」という役割を演じる傾向の強い日本人にとって、素の自分を出すのは大変なこと。ある程度、酒が回った2軒目でようやく、日頃の役割を捨てられるのだ

 フジテレビ系で放送中の番組『ダウンタウンなう』内のコーナー、「本音でハシゴ酒」。ダウンタウンと坂上忍が、ゲストを迎えて一緒に酒を飲むという内容の人気企画だ。視聴者は2軒目、3軒目と店が代わるにつれ、過激になっていくタレントたちのトークを面白がって見る。

 テレビ東京系の『二軒目どうする?~ツマミのハナシ~』も同様。TOKIOの松岡昌宏と博多大吉が居酒屋でトークするバラエティー番組で、お酒によってタレントたちの本音がこぼれるのが、ウケている。

 これは、一般人も同じだろう。最近は若い世代を中心に1次会で解散、という風潮が主流になっているが、50代以降と飲めば、最初の1軒では終わらず、なぜか2軒目に行きたがるという人はまだまだ多い。

「状況にもよりますが、ハシゴ酒をする理由は、その場にいる人ともう少し飲みたいということに集約されると思います」

 そう話すのは、コミュニケーション研究家の藤田尚弓氏。わざわざ店を変える理由としては、時間制などの制約がある場合もあれば、雰囲気やつまみを変えたいという目的のためでもある。あるいは、1軒で帰りたい人のために、店を変えるという理由をつけて、いったん締めるということも考えられる。

 いずれにせよ、1軒目を前半戦と捉え、後半戦である2軒目に繰りだすのだ。実はこの考え方は、日本人ならではの思考だと藤田氏は指摘する。

「日本人は、自分の役割を演じるのが得意な民族であるといわれています。海外の人ももちろんそうで、パブクロールと呼ばれるハシゴ酒文化もあるのですが、日本人は、より役割を演じる傾向がより強いのです。例えば、課長という役職を持っている人は『自分は課長だ』という自意識が強くあるため、どの場においても課長という役割を演じてしまう傾向にあります。素の自分を出しにくいのです」(藤田氏、以下同)

 アルコールにこういった抑制を緩和させる作用があるのは、周知の通り。しかし強情な日本人にとって、1軒目で素を出すことは困難なのだ。ある程度アルコールが入り、次の店へ…という段階でようやく日頃の役割を捨てられる。だから皆、2軒目、3軒目へとハシゴしたがるというわけだ。