さらに言えば、この奨励金の金額は毎年増加を続けており、同調査で全ての持株会実施企業の平均は8.1%となっている。今どき8%以上もの利子補給が行なわれる資産形成法などは、どこを探してもないだろう。これは、かなり有利な制度だと言える。

 なぜ、こんな大盤振る舞いが行なわれるのかといえば、前述の企業側から見たメリットが大きいと言えるからだろう。しかし、いくら自社株とはいえ投資するのはあくまでも株式だ。価格変動のあるものなのだから、単に奨励金の多寡だけで決めるのは早計に過ぎる。

最大の問題点は
リスクの過度な集中

 だが、従業員持株会には、大きな問題点がある。それは「リスクの過度な集中」だ。

 多くのサラリーマンにとって、会社の給料が収入の全てだ。つまりフローの収入は、ほぼ全てを会社に依存しているのだ。会社の株式を持つというのは、そうしたフローの収入に加え、ストックの資産まで会社の収益に依存することになる。資産を分散すべきという資産管理の大原則からすれば、明らかにリスクの過度な集中で、決して適切とは言えない。にもかかわらず、なぜそうなってしまうのだろうか。

 行動経済学には、「利用可能性ヒューリスティック」という概念がある。これは、自分が知っている、あるいは取り出しやすい情報のみに頼って判断したり、経験則や直感のみに基づいて判断したりしてしまいがちになる傾向のことだ。

 これを従業員持株会に当てはめれば、「正確にリスクを認識しなくなる」という問題が起こりやすくなる。なぜかというと、「自社株の積み立て」にはあまりリスクを感じないような仕掛けが存在しているからだ。

 まず、あらゆる投資対象の中で、自分が勤めている会社ほど身近な存在はない。そのため、本来はリスク資産であるにもかかわらず、自社株については根拠のない安心感を持ってしまいがちだ。その上、「積み立てで投資をする」という行為自体が、価格変動リスクに対し敏感になりにくくなるという一面もある。