損失を嫌がるために大損してしまう
行動経済学の「損失回避性」
行動経済学に、「損失回避性」という大事なキーワードがある。人間は、誰しも損失を回避したい傾向があるということだ。しかし、これは当たり前の話。損をしたい人間なんて誰もいないからだ。ここでいう損失回避性とは、物事を判断するあらゆる局面において、損失を嫌がってしまうために、「実はもっと大きな損をしていることが多い」ということだ。
「損して得取れ」ということわざがあるが、言うは易しで、人間はなかなか目の前の損に目をつぶり、もっと大きな利益を得るということができないものである。具体的にいくつかの事例で考えてみよう。
(1)掛け捨て保険が嫌いで貯蓄型保険にする
保険という仕組みの本質は、極端に言えば損をするものだ。もう少していねいに言えば、みんなが少しずつお金を出し合って、誰か大きな不幸な目に遭ってしまった人にお金を回してあげるという仕組みだ。つまり、わずかな損を負担することで、自分が大きな損に遭ってしまった時に備えるというのが保険の本質だ。