支持率低下に歯止め
有識者に聞いたマクロン改革の評価
フランス大統領にマクロン氏が就任してから、2018年5月で1年が経過した。この間、弱冠40歳という若い大統領は、盟友フィリップ首相とともに経済改革を推し進めてきた。
筆者はこの5月、欧州(ロンドン、ブリュッセル、パリ)を訪問し、マクロン大統領の経済改革に関する有識者の評価をヒアリングしてきた。官民を問わず、いずれの有識者もおおむね好意的な評価を与えていることが印象的であった。
マクロン大統領の経済改革を一言で表現するなら、それは規制緩和の推進による民間経済の活性化に他ならない。規制緩和によって政府の役割を後退させて民間の活力を刺激し、生産力の向上を図ることを目的とする改革である。需要(分配)よりも供給(成長)を重視するため、有権者の支持は離れやすい。伝統的に成長よりも分配を重視する傾向があるフランスでは、その傾向はなおさら強い。
ただ、マクロン大統領の支持率はそれほど落ちていない。就任当初の45%程度から一時40%を割り込んだものの、足もとでは40%程度の水準をキープしている。歴代の大統領に比べると就任当初の支持率がそもそも低かったということもあるが、フランスでは大統領が就任後1年で支持率を急落させる傾向がある中で、マクロン大統領はかなり健闘している。
経済改革に対する反対勢力の行動が有権者の支持を得ていないことも、マクロン大統領の勢いを下支えしている。端的な事例として、フランス国鉄(SNCF)改革に対する有権者の反応がある。改革に反対する国鉄職員は、4月から6月までの3ヵ月間、5日に2日の割合でストを行っている。ただし世論研究所(ifop)の調査によれば、有権者の過半が今回のSNCFの対応を「不適当」と回答している(6月11日実施分で58%)。
フランスでは1995年、当時のジュペ首相(シラク大統領時)が経済改革を実施しようとした際に、世論の支援を受けたSNCF職員らが全国規模のストを行い、首相を退陣に追い込んだことがある。しかしながら今回のSNCFのストについては、有権者の多くが冷ややかな評価を下しており、SNCFのストも95年ほどの盛り上がりを見せていない。景気の停滞を脱するためには痛みを伴う改革をある程度は受け入れざるを得ないという、有権者の意識の変化が垣間見える。