Box社アーロン・レヴィの強烈な顧客目線

村上:海外企業と日本企業の違いって何かなと考えてみると、海外企業の方が外部目線を得るために使う時間が感覚的に多い印象がある。CEOレベルでもそうだし、現場でもフットワーク軽く国外を含めたネットワークを作って現場の情報をとってくる。
やっぱり外部の目線こそ、意思決定できる人により一層持つべきファンクションだし、それがなければステージチェンジって乗り越えられないんじゃないかな。

朝倉:黒澤明の映画で「乱」という、リア王をモチーフにした映画があるじゃないですか。長男に家督を譲った仲代達矢演じる戦国大名が追い出されて路頭に迷い、息子たちが骨肉の争いを演じるっていう映画。あの映画に道化師が出てくるんですが、その道化師は仲代達矢におちゃらけながら遠慮なくモノを言うんだけど、一緒にいる部下は何も言えない。
経営者の周りも放っておいたらイエスマンばかりになってまう。だから外部と内側の中間的な道化師を置いて、「あんた、大した事ないで」「お客さん、離れていっとるで」とポロッと言ってもらえるような環境を意識的に築いておくべきなんでしょうね。現実に起こっていることやそれに関する苦言って身も蓋もなさすぎて、中の人だと言いにくかったりするじゃないですか。本当はみんな、気づいてるはずなんだけど。

小林:「外部の目線」で印象的だったのが、Box社のアーロン・レヴィ。会ったときはまだ28歳ぐらいだった気がする。イケイケな20代のビリオネアって、ブイブイ言わせてくるんやろうなと思ってたんやけど、会ってみたら凄く顧客志向だった。
Boxを日本で最初期に使いはじめたのがDeNAだったそうで、エバンジェリストみたいな存在だったから、どうやって使っているか、どういう不満があるのかを是非知りたいと、アーロン・レヴィ自身が聞きに来た。こちらがリクエストを伝えると、CEO自身がフィードバックを受けて即座に改善してくる。あれだけやってる会社ってそうはおらんのちゃうかなと。
彼らの競合はマイクロソフトとかで、むちゃくちゃ強いところと戦っているから、プロダクトの改変スピードで徹底的に差別化するしかないんかもね。

*次回に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年10月10日に掲載された内容です。

営業は兵隊じゃない!商売は現場で起きている朝倉祐介 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。


営業は兵隊じゃない!商売は現場で起きている村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。


営業は兵隊じゃない!商売は現場で起きている小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。