シニフィアンの共同代表3人が企業の成長フェイズにおける「ステージチェンジ」について放談するシニフィ談の第3回(全8回)。(ライター:福田滉平)

競争環境の変化に現場は誰よりも早く気づいている

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):自分が一番のバイブルにしてる本の中で、インテルのアンディ・グローブも言ってたんやけど、環境の変化って現場の方が早く気づいてるんだよね。めちゃめちゃ当たり前の話やけどね。「あ、この商品売れなくなってる」っていうのは、最前線のセールスが一番早く気付く。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):プロダクトと営業の話については、日本はプロダクトに対する営業のオーナーシップが相対的に薄い会社が多い印象があります。つまり、営業は売るだけの仕事だという認識。
一方で、一部の海外グローバル企業では、PL責任を営業に全部持たせている。営業が一番上流で管理して、営業ドリブンでPLを作っていく。そうすると、営業がダメって言ったことにコストがかけられなくなって、会社も「ソリューション営業をした方が良いんじゃないか」「顧客に求められる商品は今作っているものと違うんじゃないか」とか「はっ」と気づく。
そうしないと、顧客のニーズに答えているのか、コスパがいい提案になっているのか、誰が判断するのか。各々のプロダクトチームは判断できない。ましてや年々、パッケージ提案やソリューション提案、メンテナンスで儲けるなど、PL作りが多様化、多期間化してきている。
そういう意味では、営業は兵士だと思っている会社が、営業こそが重要で全権限を与えようといった風に発想を転換するのも、大きなステージチェンジでしょう。営業も交えた組織や戦略変更に際しては、内部的・組織的に大きな変化が生じるけど、内部的であるが故にその変化は外部、つまり競合他社には見えづらい部分があるよね。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):ミスミグループ元代表の三枝さんは「創って、作って、売る」というサイクルを商品単位で一気通貫に実現し、ファンクションごとに分けるなと仰っていますね。最前線の営業がお客さんの意向を汲み取った上で開発にフィードバックするという一貫した体制を持っておかないと、お客さんのニーズからかけ離れたプロダクトを提供してしまうと。

村上:それで言うと、営業レベルで全体の収益責任を管理する必要性が高まるのは、プロダクトラインが複数あるときかもしれへんね。例えば5ラインをインテグレートして売るってときは、一製品や一事業部で閉じて管理するのが難しい。地域と製品のマトリックス構造になる。そうすると、全体の収益管理、個別の収益管理の整合性、事業としての戦略判断がより難しくなる。そういう規模化や複雑化が組織や体制変化の変わり目なのかもしれない。
いずれにせよ、良いもの作ってたら売れるっていうわけじゃなくなってきて、誰かが一貫して見ることが必要になる時が来る。

朝倉:考えてみたら会社の創業期って、社員みんなが営業もやる訳じゃないですか。いざ、お客さんが「ここの使い方がわからない」って言い出したら、開発者が一生懸命説明しに行くって時もある。組織化が進むと当然役割分担ができるわけですが、ここでどうしても距離が空いてしまいがちなんでしょうね。

小林:情報格差やね。組織規模が大きくなると、チーム内の情報格差が大きくなって、ある情報に対して鋭敏に反応する人と、しない人が出てくる。
「かくかくしかじかの理由で大事だろ」っていう説明をしないといけない人が出てくると、必然的にコミュニケーションする時間がめっちゃ増えんのね。「これ大事やん?なぜなら……。分かる?」って説得する時間がすごく長くなる。