「どうすれば、一生食える人材になれるのか?」
「このまま、今の会社にいて大丈夫なのか?」
ビジネスパーソンなら一度は頭をよぎるそんな不安に、新刊『転職の思考法』で鮮やかに答えを示した北野唯我氏。
本連載では、転職という「一生を左右するほど大切なのに、誰にも聞けないこと」の作法を北野氏が解説する。

転職の最強の壁「嫁ブロック」「親ブロック」の処方箋はこの3つだ

転職の最強の課題「嫁ブロック・親ブロック」への3つの処方箋

転職したいけど、パートナーに反対された

転職においてとても一般的な悩みです。実際、転職後の内定辞退のうち、この嫁ブロックが主な理由であるものは決して少なくありません。

あるいは、「親ブロック」も存在します。特に良い大学を出て、新卒で大きな会社に入った人ほど、親に転職の相談をしたら「反対された」ということもあります。

ドライに言ってしまうと「大人になって何言ってんだ」という話ではありますが、現実的にはそうはなかなかいかないもの。

というのも、この問題の難しさは「相手も自分の事を想ってくれているからこそ、発生する」からです。ほとんどの場合、親やパートナーはあなたのことを思って「転職を反対」します。たとえば「大きな会社にいた方がいざというときのタメだから」などと。つまり、真剣にアドバイスしてくれている。

ですが、あなたもあなたで将来にたいして真剣だから転職したいわけです。今の会社にいても未来がないとか、やりがいを感じられないとか、焦りがあるとか、考えて考え抜いたからこそ「転職したい」と考えたはずです。

この「お互いに真剣だからこそ、発生する問題」をどう乗り越えれるには何が必要なのでしょうか?

結論は、

1.ロジック

2.共感

3.信頼

の三つです。

転職の最強の壁「嫁ブロック」「親ブロック」の処方箋はこの3つだ北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年ハイクラス層を対象にした人材ポータルサイトを運営するワンキャリアに参画、サイトの編集長としてコラム執筆や対談、企業現場の取材を行う。TV番組のほか、日本経済新聞、プレジデントなどのビジネス誌で「職業人生の設計」の専門家としてコメントを寄せる。

パートナーブロックが発生するのは「ロジック」だけで勝負しようとするから

ほとんどの「ブロック」を受ける場合、問題はロジックだけで勝負しようとしていることに起因しています。

ここでいう、ロジックとは「なぜ転職すべきなのか。その会社を選ぶべきなのか」の部分です。仮にこの筋が通っていたとします。ベースとなる部分です。しかし、いくらロジックがしっかりしていても、ブロックにあうケースは多い。

そして、この際、本当に必要なのは99.9%のケースで「共感」です。具体的には「相手の文脈で話すこと」です。

これは簡単な思考実験を行えばわかります。

たとえば、あなたは今結婚していて、3歳の子どもがいたとします。そして普段の子育ては、あなたのパートナーが行なっています。専業主婦または、専業主夫だとしましょう。あなたはほとんど普段は家事も育児もしないのに、たまたま有給をとったときに、子育てに関して気になることがあり、それをパートナーに対して指摘したとします。

「なぜ、XXができていないんだ?」

ほぼ100%の確率で、パートナーはイラッとするでしょう。当たり前です。育児の現状に関してはあなたよりも、はるかに相手の方が熟知しているからです。言い換えれば、現場に1番近い人間の考えを無視して、意思決定しても反発を招くだけ、ということです。

しかし、これは実は「転職」も同じなのです。冷静に考えて、その仕事場について1番詳しいのは間違いなく「転職を考えている本人」です。多くの場合、とても長い時間悩んで、その上で転職を考えたわけです。現場を1番知っている。

だとしたら、上述の子育てのケースと同様に、現場に1番近い本人が悩み悩んだ結果の結論であれば、「それだけの最も重みがあるべき」はずです。

重要なのは「相手の文脈で話すこと」その上で「信頼」で押す

そして、これは冷静に考えてみると、何も、転職の話に限りません。人間はそもそも、自分が知っていることの1メートル先のことしか理解できません。

たとえるなら、数学のように、A= Bを知っているからこそ、A= B= C=Dと順番を追って理解できる。一方で、Aしか知らない人は、C=Dは理解できません。

同様にパートナーブロックや親ブロックの際に、大事なのは、相手が分かっていることや、相手が理解できることからスタートすることなのです。具体的には「相手がよく使う言葉」や、「相手がよく言う悩み」からスタートすることです。

たとえば、パートナーが普段、「子どもが通っている保育園で、親が参加しないといけない行事があって大変」と言っていたとします。このケースの場合、このようにロジックを展開していきます。

「この前、保育園の行事が大変って行ってたよね?」

「うん」

「どういうところが大変なの?」

「こっちは子育てで手一杯なのに保育園の行事なんて手を回す暇がないのよ」

「それは大変だね、実は俺も今の会社で同じ状況なんだよ。本業があるのにサイドプロジェクトもやらないといけなくて」

というふうに繋げていくわけです。もちろん、これでも完全に説得できるわけではないですが、ロジックをいきなりぶつけるよりは遥かに説得の確率は高くなります。

この「相手が普段使う言葉」を探すことは、とても骨のある作業で、普段から「どんな話なら転職の理由に繋がるか」を探していないと見つけづらいものかもしれません。

たとえば「友達が転職した」という話であったり、「新卒時代の就活の話」や「人生で後悔していること」などが比較的、つながりやすい傾向にあります。これが「共感」の部分です。

最後は信じてもらうしかない

ロジックを固め、その上で「相手の文脈で話す」ことができたら、最後は一番現場に近い場所で悩み、考え抜いた自分を「信じてもらうこと」しかありません。すべてを伝え終わった後は、力強く「自分を信じてほしい」という言葉で締めくくりましょう(ちなみにこればっかりは、普段からの関係性の積み重ねなので、1番難しいかもしれません笑)。

まとめると親ブロックやパートナーブロックに必要なのは

1.ロジックを固めること

2.相手のわかる文脈で共感をえること

3.信じてほしいとストレートに伝えること

の三つです。

最後に、「そのことを1番よく理解し、考え抜いた人が決めること」は意思決定の本質です。

応援しております。以上、少しでも参考になれば幸いです。