除染費用がいくらかかるかをはじき出しました。そうしたら3200億円かかるということが分かった。それも、素案に入れて提出しました。ただし、これは、3200億円飯舘村にくれ、というわけではない。私は、「これだけの金額がかかる、本当に大規模な事業になるんですよ」というメッセージを伝えるために、この数字を出した。

――その3200億円という数字も、村民の間では問題視されている。3200億円もかけて除染をするのではなくて、もう除染は諦めて世帯数で3200億円を割って、1世帯1億円以上の復興資金を得るべきだろうという声もある。それに、その素案は議会を通していない、と主張する村民もいると聞く。

 村民からは怒られました。そんなカネをかけて、何になるんだと。「やっぱり村長は除染をなんとしてもやって、村民を村に返したいんだ」、「村民をモルモットにするな」、「除染をしても戻れるかどうか分からない」とか、いろいろ言われました。除染してもいずれ放射線量が再び上がることもあるわけだから、そんなカネをかけずに、現金を村民に支給した方がよっぽどありがたい、という声があることも知っている。

 ですが、私は除染して、全村民が戻ることは可能だと思っている。でも繰り返しますが、復興計画では全員帰村を前提にはしていない。それに3200億円という数字は、村に降って来るカネじゃないんですよ。あくまでも、国に対して「これだけかかる事業だから本気出してやってくれ」というメッセージなんですよ。われわれの提言です。しかし、数字が一人歩きしてしまった。

除染事業は問題だらけ
自治体に裁量権をよこせ

――今、進められている除染事業について、どのように考えているか。

 問題だらけだ。国が責任持ってやると言っているけど、自治体にももっと裁量権を与えてもらいたい。国直轄で、国が主導して業者や人を全国から集めて、ちんたらやっている。

 当事者の自治体は、口をあけて待っているしかないんですよ。裁量権をよこせと言っているのは、私たち自治体も国と一緒に苦しみますよ、住民と向き合いますよ、飛んでくる“矢”も逃げずに受け止めますよ、ということなんですよ。

 今のままでは、本格的な除染は夏にならないと始まりません。なぜか。外から来た人間が一軒一軒、了解を取っているから。ここの木は切ってもいいですか、ここの畑はどうしますか、なんてやっている。外の人がハンコもらおうと思ったら、時間はかかるよね。そういうことは、コミュニティを作ってきた飯舘村の村民が担えるところですよ。数日でできますよ。

――村長は「までいブランド」を再生することを、復興の基本方針として掲げている。どういうことか。

「までい」は「真手(まて)」の方言です。意味は「両手そろった手、両手」です。私が小さな頃はよく村で使われていました。たとえば「までいに子ども育てないと後で苦労する」というように使いました。「までい」には、「丁寧に」「大切に」「じっくりと時間をかけて」「心をこめて」というすべての意味を網羅する言葉です。村を、この「までい」というキーワードを基に再生していこうと思っています。

 今回の復興は、今後20~30年の日本のありようを考え、見出す試練だと思っている。飯舘村は、その答えを「までい」という考え方に依って、見つけ出そうと思っている。「までい」を基に苦しみを乗り越えることができれば、それは次の世代に伝えることができるし、日本はかつてのように世界から尊敬されるだろうと思う。むしろ、そう思ってもらえるような復興ができなければ、今やっていることは本当にむなしい。