西野朗監督
西野朗監督の決勝トーナメントでの采配に注目だ 写真:長田洋平/アフロスポーツ

開催中のワールドカップ・ロシア大会で、2大会ぶり3度目のグループリーグ突破を果たした日本代表が日本時間3日午前3時、ロシア南部のロストフ・アリーナで、FIFAランキング3位の強豪ベルギー代表との決勝トーナメント1回戦に臨む。サッカー王国ブラジル代表を撃破しながら、決勝トーナメントへ日本を導けなかった1996年のアトランタ五輪から22年。主力選手を温存し、最後はあえて黒星を選んだポーランド戦の采配が全世界で賛否両論を巻き起こしている中で、リアリストの一面に攻撃的なスピリットを融合させてきた西野朗監督(63)は、日本がまだ足を踏み入れたことのないベスト8以降の舞台へ向けて、一世一代の采配を振るう。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「マイアミの奇跡」とグループリーグ敗退から22年、
ようやくたどり着いた決勝トーナメント

 知力と死力のすべてを尽くしても立つことがかなわなかった舞台に、22年もの歳月を経てたどり着いた。開催中のワールドカップ・ロシア大会で、日本代表を2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出へ導いた西野朗監督の心境を表せばこうなるだろうか。

 41歳だった1996年の夏に、西野監督はアメリカの地で大いなる蹉跌を味わわされている。21世紀になって久しい今でも「マイアミの奇跡」として語り継がれる、サッカー王国・ブラジル代表を撃破したアトランタ五輪は、還暦を超え、1歳になった孫もいる指揮官の記憶に色濃く刻まれている。

 選手たちとの信頼関係が揺らいできたという理由で、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の電撃解任が発表されたのが今年4月9日。慌ただしさと不可解さが残る中で後任に就いた西野監督は、3日後の同12日に都内で行われた就任会見で、おもむろにこんな言葉を残している。

「かつて五輪で2つ勝っても、次に進めなかったことを経験しています。ワールドカップでも6ポイントを取っても上がれないことも考えられますが、それでも1試合1試合の戦いでベストを尽くして、チャレンジしていく姿勢で戦っていきたい」

 アトランタ五輪のグループリーグ初戦で成就させ、世界中を驚かせた「マイアミの奇跡」には続編がある。舞台をフロリダ州オーランドに移した第2戦で日本はナイジェリア代表に0‐2の完敗を喫し、再びオーランドで行われたハンガリー代表との最終戦で3‐2の逆転勝利をもぎ取った。

 グループリーグで勝ち点6を手にすれば、それまでの五輪では例外なく決勝トーナメントへ駒を進められた。しかし、アトランタ五輪のグループDは日本、まさかの黒星からメンタルを立て直したブラジル、最終的にはアフリカ勢初の金メダルを獲得したナイジェリアが2勝1敗で並んだ。