三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下証券でで長期国債先物の不正取引がありました三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下証券で起きた国債先物の相場操縦は、銀証連携などの一体運営を進める中、グループ経営の在り方にも疑問を投げ掛ける Photo:REUTERS/アフロ

三菱UFJモルガン・スタンレー証券社員による長期国債先物の不正取引をめぐり、証券取引等監視委員会が課徴金納付命令を金融庁に勧告した。証券会社初の不名誉な不正が起きた背後には、厳しい収益環境下でのディーラーの焦燥が浮かび上がる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)

 三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の大手証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のディーラーが、昨夏に手を染めた長期国債先物の相場操縦。金利に影響を与える長期国債先物の相場操縦を証券会社が行うのは初のことで、6月29日に証券取引等監視委員会が2億円超の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告した。

 不正取引をしたのは三菱モルガン証の社員1人で、同社の自己勘定取引によるもの。同社員が昨年8月25日、実際に売買を成約させる意思がないにもかかわらず大量の注文を出す「見せ玉」と呼ばれる手口を使い、国債先物価格を不正に操作したというのだ。

 同社の屋台骨を成す法人部門であるが故、とりわけ厳しい収益を課されたディーラーが「収益ノルマで後れを取るまいとの危機感を抱いたことが、不正取引の背後にあったのではないか」と、ある債券市場の専門家は推測する。

 監視委は同社員が評価損を取り戻すために独断で行ったとみるが、大手証券関係者からは「損失を挽回したかったとしても信じ難い行為だ」と驚きの声が漏れる。というのも、わずか1銭の値動きに伴うさや抜きで上げた利得は158万円にすぎないからだ。

 だがその代償は大きい。不正発覚後、複数の事業会社による社債発行案件の引き受け主幹事から三菱モルガン証が外され、手痛い二次被害にまで発展しているからだ。

 なぜ、このような極めてリスクの大きな不正に手を染めたのか。その深淵を探ると、今回の病巣が属人的な問題にとどまらない可能性が透けて見える。