例えば日本は1981年から対米自動車輸出の自主規制(1981年度168万台、その後、1993年度の230万台をもって終了)を行ったが、米国内の日本車に対する需要は減らず、価格は騰貴した一方、米国自動車産業の回復ははかばかしくなかった。

 むしろ米国の雇用拡大に明らかな効果があったのは、日本メーカーによる対米投資の拡大だった。今や日本メーカーの米国内での生産は377万台と、輸出の174万台を大きく上回る(2017年)。

北朝鮮の「非核化」で
中国の協力を得る思惑?

 ではトランプ大統領は、なぜ経済合理性のない大規模な制裁関税の実施にこだわるのだろうか。

 どの国でも政治は、選挙が近づけば、雇用を守ると称して保護貿易主義に傾きがちであり、トランプ大統領のやり方も今年11月の中間選挙対策の面が強い。特に特別検察官によるロシアゲート捜査の結果、大統領弾劾の議論が強まるとなれば、その手続きが開始される下院で共和党が多数を失うわけにいかないという思いもあるのだろう。

 ただ中国の報復関税で影響を受ける農業団体の抵抗なども今後、熾烈を極めようし、ハイテク業界自体も保護貿易には批判的だ。

 こうしたことを考えると、トランプ大統領は当面は中国に強硬な態度を緩めず、結果的に「取引」に持ち込むことを企図しているのかもしれない。

 特に北朝鮮問題の推移によって中国の協力が必要となった時に、貿易問題と取引をするといったことは考えられないではない。

 非核化をめぐる米朝の交渉は、6月12日の米朝首脳会談後の楽観的ムードが、米国内では徐々に失せつつある。ポンぺオ国務長官の3度目のピョンヤン訪問でも米朝の違いが縮まったということではないようだ。

 金正恩朝鮮労働党委員長は3回にわたる習近平主席との首脳会談を通じ、米国の主張を拒否し、非核化は段階的に進めていくことについての了承を取り付けているのだろう。

 米朝間の交渉では、非核化のロードマップ作り、特に早い段階での核施設の完全な申告と検証の合意が不可欠だが、この問題の進展には、今後、中国がどういう態度をとるかが鍵になる。トランプ大統領は当然、このことを意識していると思われる。