中国の反応は抑制的
首脳間での「取引」を想定?

 一方で中国側は報復関税を実施したとはいえ、対応は慎重だ。いくつかのことを意図しているように見受けられる。

 第一には、米国に反発してもトランプ大統領への直接的な批判は避けている。これはトランプ大統領も同様で、中国への批判は行っても習近平主席については尊敬すると述べている。

 どこかの段階での首脳レベルでの取引となるかもしれないことを双方が想定しているのだろうか。

 第二に、中国は米中貿易戦争という図式で見られることを避け、米国の保護主義に反対する国際社会との連携を図る図式を作ろうとしている。

 これはリベラルな国際秩序の破壊者はむしろ米国であることを印象付け、中長期的に中国が世界のリーダーたることを目指しているからなのだろう。

 第三には、中国自身が自国の先端技術製品の競争力の脆弱性は理解しているのだろう。

 貿易戦争の結果、習近平主席が掲げている「中国製造2025」が看板倒れとなることを怖れているのだろうし、米国の強硬な姿勢が、中国の先端産業育成のやり方に対する警鐘になっていることは否めない。

 第四に、貿易戦争が金融市場に悪影響を及ぼし、中国経済への信頼がなくなっていくことに強い懸念を持っていると見受けられる。

 共産党は、国内で貿易戦争を激しい言葉で非難し、結果的にナショナリズムを高揚させることは避けるべしという明確な指示を行っているようだ。

 こうした抑制的な姿勢は、米国が10日、追加的に2000億ドル相当の対中輸入品への制裁関税賦課の方針を発表した後の中国側の反応を見ても一貫している。

 中国政府は「中核的利益を守る」という言葉を使い、WTOに提訴するとともに対抗措置をとることを明らかにしたが、それでも過激な米国批判は控え、反応は抑制的だった。

出口はあるのか?
9月の国連総会がめどに

 こうしたことを考えてくると、貿易戦争が無制限に拡大していくことは米中双方の利益にならず、どこかで「出口」を模索する動きになるのだろう。

 トランプ大統領にとっては、北朝鮮問題では9月の国連総会までに非核化の段取りを合意することが極めて優先度が高い。もしこの段階でも非核化のロードマップができる見通しがないとなれば、米国内では、そもそも米朝首脳会談は何だったのかという雰囲気が出てくるだろう。

 これを避ける上で、中国の北朝鮮に対する働きかけは極めて重要となるだろう。したがってこの段階で、トランプ大統領が、貿易問題で一定の妥協を前提にして中国との「取引」を行うということは大いに考えられる。

 2000億ドル相当の中国産品を対象にした10%の制裁関税賦課の最終決定を行うとされる8月末から9月初めが、その時期となるのかもしれない。