格差が最も広がるのは就学前
では、子育てしやすい社会を実現するために、具体的にはどのような制度が必要でしょうか。
たとえば「幼児教育の無償化」という議論が最近活発になってきています。就学前教育が拡充することは、女性の労働参加を促す。また、就学前教育に対する公的支援は、同時に学力格差や貧困の連鎖を食い止める効果もあります。
先述したように、いまの日本は就学前教育にほとんど公的なお金を投じていません。
しかし、格差が一番広がるのが就学前です。5歳で文字が読める段階で小学1年生になるのかどうかで、小学校に入ってからの勉強のしやすさも変わってくる。その意味では、各家庭が幼児期に教育に割いた環境の差が、後々まで露骨に影響をする。就学前の教育を家庭に任せていると、親の格差がそのまま次の世代に受け継がれてしまうわけです。
就学前教育が義務化されれば、幼児全体の教育水準を底上げすることになる。それは、格差の継承や固定化を防ぐ一助になるのです。2017年の衆院選では、各党は幼児教育の無償化を公約として掲げるようになりました。その内容はまちまちですが、就学前教育が政策課題として入ってきたことは一歩前進といえるでしょう。
しかし、ただ無償化しただけでは不十分。格差是正という観点でいえば、義務化に加えて、個別事情に応じた質的支援も充実させる必要があるといえます。