「おたくは知らない」と言われて門前払い…
藤野 今回のAIJ事件では、AIJ投資顧問は旧労働省の天下り役人をコンサルタントとして雇っていた。このコンサルタントのコネクションを使って、様々な企業の年金基金に営業攻勢をかけていたんです。こういった企業の年金基金の担当者もまた旧労働省の天下りだからです。彼らは資産運用に対して十分な知識を持ちあわせていなかった。だから、AIJのような詐欺に引っかかってしまった。こういった日本の企業年金の状況を改善していかないといけないと思います。
詐欺にあった年金基金を調べてみたら、私たちがいつも「おたくは知らない」と言われて門前払いを食らっていたところでした。私が報道を見てなるほどと思ったのは、元官庁時代の先輩後輩の関係を使ってアポを取って行ったということです。むしろその点はなるほどそうやるのかあって(笑)。
藤沢 実際に相場の経験があれば、委託先のファンド・マネジャーの戦略はだいたい理解できますし、どういった市場環境でどういうパフォーマンスになるかも大体推測できますね。AIJはリーマン・ショックの前後でも、同じように高いパフォーマンスを出し続けていた。そこで本来なら何かおかしいと気づくべきなんですよね。で、実際にはあそこはおかしいという話は事前で噂になっていたようです。あとで年金基金の知人に聞くと、「ああ、あそこはなんとなくやばいと思っていたよ」という人も少なくなかったですね。
大阪の被害が一番少なかった
藤野 実は、AIJの被害額を県別で見るととても面白いんですよ。東京がもちろん一番被害額が大きいんだけど、一番被害額が少ないのが大阪で、二番目に少ないのが名古屋なんです。大阪の人はなかなか手強いんですよ。オレオレ詐欺でも、大阪のお年寄りはぜんぜん引っかからないでしょ。大阪の人は、まず見栄を張らないんですよ。東京の人とは違う。「頭悪いからようわからんわ、ちょっと教えてーや」とかいって、本当はよく知ってるのに、相手に探りを入れる。そして理解できないことはやらないんです。当たり前のことなんですけどね。
あと、名古屋の人は石橋をたたいて渡らない、というようにリスクを取ることに慎重な土地柄ですから、それでだまされなかったのかもしれませんね(笑)。