「藤沢数希の金融対談日記」の2人目のゲストは、独立系投資運用会社のレオス・キャピタルワークスで最高投資責任者(CIO)を務める藤野英人氏。直販ファンドの「ひふみ投信」を運用し、TOPIXなどのインデックスを大幅に上回る運用成績を上げつづけるカリスマファンドマネージャーである。
第1回に引き続き話題はAIJ事件について。今後の規制のあり方のほか、騙された人・騙されなかった人の意外な素顔を明かしてもらった。
規制緩和を後退させてはいけない
藤沢 そもそも、資産運用会社には、上場会社に求められているような外部の監査法人による監査は義務付けられていないのですか?
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藤野 外部監査といっても、資産運用会社そのものに対する監査と、資産運用会社が運用するファンドに対する監査がありますが、会社に対する外部監査は上場していなければ義務化されていません。また、ファンドに関しては、不特定多数の投資家に販売する公募ファンドに関しては外部監査が義務付けられています。我々の運用するひふみ投信などは公募ファンドです。しかし、特定の機関投資家や一般の投資家でも50人未満にしか勧誘しないものは私募ファンドといわれ、そのような義務はありません。
藤沢 現在、民主党政権は、AIJ事件を受けて、資産運用業に関して規制強化しようとしていますね。
藤野 今後、規制強化の可能性はありますが、そこには様々な問題があります。藤沢さんもご存知のように、外資系投資銀行のトレーダーなどが独立してヘッジファンドをはじめようと思うと、日本では非常にコストが高いわけです。コンプライアンス部門やバックオフィスなどを自前で揃えなければならず、最低でも年間数千万円のランニングコストが必要でした。
だから、日本株に投資する日本人のヘッジファンド・マネジャーであっても、規制が緩いシンガポールに資産運用会社を作り、ケイマンなどのオフショアにファンドを登記して、外国籍のファンドとして、日本の企業年金基金などから資金を集めていたわけです。
日本人が日本の株に投資するのに、シンガポールなどに税金もタレントも取られてしまい馬鹿らしいですね。だから、金融庁は小規模のヘッジファンドを日本で開業しやすいように規制緩和を進めていました。今年の4月1日から施行されたのですが、企業年金基金などの機関投資家のみが対象の場合、資産運用会社はコンプライアンス部やバックオフィスを、資産を預かる信託銀行などに外部委託できるようになりました。これでファンドマネジャー数人だけで、日本で資産運用会社を作れるようになったのです。