さらに、各国ごとの事業だけではなく世界市場に対して事業を展開していくような場合は、国を超えて人材を配置していく必要があり、ポジションごとに最適な人材を世界中から探して登用していく「インターナショナル人事」と呼ばれる人事モデルへと発展していきます。

 長年、商社業界は「セントラル人事」によって事業の成長を支えてきました。しかし現在は、事業環境の変化に合わせて、従来の日本人を駐在させる「セントラル人事」から、現地人材を育成する「マルチナショナル人事」へと人事モデルを変化させていこうとする商社が増えており、伊藤忠はその先陣を切った商社と言えるでしょう。

現地人材の育成を加速させる
グローバル人材戦略とは

 先述したとおり、伊藤忠は、大規模な資源事業に依存しないというビジネスモデルであるがゆえに、非資源事業を中心に、多くの事業を展開していかなければならないという特徴があります。

 とりわけ、従来の日本企業顧客中心の事業だけではなく、例えば中国最大のコングロマリットである「CITIC」との資本・業務提携に代表されるように、海外企業との事業を拡大する必要があります。

 そのためにも、世界63ヵ国に約120の拠点を持つ伊藤忠にとって、外国人社員の活躍はグループの成長の重要な要素となっています。特にアジアや新興国を中心に、地域に根差して事業を展開するためには、現地人材が権限を持って事業を推進していくことが欠かせません。

 しかし、長年日本人を中心とした人事を進めてきた企業では、現地人材に関する情報が不足しており、育成するといっても「誰を登用し、どう育成するべきなのか」、また「そもそもどんな人材が各国にいるのか」ということが分かっていないケースが非常に多いのです。

 伊藤忠はこうした課題を乗り越えるため、2007年10月に東京、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、上海の各地に「世界人材・開発センター(GTEC, Global Talent Enhancement Center)」と呼ばれる組織を設置し、人事部と連携して人事制度の共通化や現地人材の育成に取り組み始めました。

 また2008年度には、全世界・全階層の職務を対象に職務・職責の大きさを測り、人材マネジメントの基礎となる区分制度「IGC(ITOCHU Global Classification)を設けて、グローバルマネジメント人材を育成するための教育プログラムの対象者を明確化することを可能にしています。