ドキドキした、マルチナが
ショーマに決断を迫るシーン
大村 マルチナなんかは、典型的な「感情的なAI」ですね。
坪井 そうですね。結構、マルチナが主人公のショーマに決断を迫るところがすごくドキドキしますよね。
人間って、一緒にごはんを食べたりしながら、いろんな話をしていくにつれて、互いの信頼関係がどんどん築かれていきますよね。
そういうときに、人が上、AIが下というような主従関係より、人間と友達、健全な対等の関係がいいのではないかと。
大村 確かに。
坪井 ですから、りんなも、結構、辛辣なことを人間に言ったりもするんですが、逆にそういう厳しいことやなにげないジョークを言ってくれたほうが、ずっと一緒にいたいなという気持ちになりますよね。
りんなも、人間の言うことを聞く「いい子ちゃん」というより、人間と同じポジションで、人間にボケたことも言いながら、エンジョイしてもらえるように開発しています。
大村 なるほど。これからの日本では、高齢者も「おひとりさま」も増え、単身世帯の増加が見込まれます。
ただ、高齢者にとっては、ペットを飼うのも、散歩するのも簡単じゃない。でも、感情的で愛着の湧くAIが、ただそばにいてくれるだけで、心がやすらぐシーンは容易に想像できますね。
坪井 そうですね。
大村 このマーケットは、どんどん拡大していくのではないですか。
坪井 はい。そのためには、特に、感情面の設計がすごく大事です。
開発は難しいですけど。長く使いたい、使い心地がいいとか、接しやすいというのは、日本人には大切。相手との空気を読みあってきた国民性ですから。
この狭い国に1億人以上が共存しているので、よい人間関係を築くノウハウは文化の中に染み込んでいて、その文化的側面をAIに入れるのが大事だと思いますね。
じつは、マイクロソフトで「感情的なAI」が開発されたのは、りんなが初めてではありませんでした。
大村 りんなより前に、「感情的なAI」が存在したんですか!? 次回はその興味深い話を聞かせてください。
坪井 はい! 誕生秘話、明かしちゃいますよ!