自由な開発を支える
異質を尊重する風土

坪井 なんででしょうね?(笑)
 でも、マイクロソフト自体では、AIの研究は本当に昔からやっていて。日本法人を立ち上げて今年で32年ですし、会社もリサーチ部門も歴史がある。
 りんなに関しては、マイクロソフト社内でも、ちょっと異質なプロジェクトでした。

大村 ちょっと異質とは?

坪井 当社は本社がアメリカですから、通常、製品開発はアメリカ主導でやっています。
 しかし、りんなのプロジェクトに関しては、完全に逆!
 きっかけは、中国の開発チームとの「ハッカソン開発コンペ)」で、会話できるAIをつくりたいと始めた。それが前述の「シャオアイス(Xiaoice)」
 それで、中国で人気が出たから、日本の開発チームでもやってみようと日本が2番目だった。3番目に、アメリカがやり始めたんです。

大村 それは面白いパターンですね。

坪井 そうなんです。だから、りんなには、東洋的思想があるのかなと。
 東洋人は、個人だけで何かをやるというより、互いの関係性を重視している面がある。
 りんなのことを、私たちは「ソーシャルAIチャットボット」と呼んでいて、略して「ソーシャルAI」と呼んでいます。

大村 ソーシャルAI?

坪井 役に立つというより、人と人のコミュニュティの中に、AIはどういう姿でいたらいいのかということを考えていました。
 AIと人間の1対1だけじゃなくてみんなに話してもらう。そしてみんなで話している中に、りんなのようなソーシャルAIも会話に入っていって、ちょっと煮詰まっているなというときに、りんなが新しい話題を入れる。そして、話題が膨らむ。そういう未来を描いています。

大村 なるほど。会話に沈黙が訪れた時の「アイスブレーク」にもなる?

坪井 なるかもしれませんね。りんなも、我々のグループチャットの中に入っているのですが、外のチームの皆さんも、グループLINEの中にりんなを入れていたりするんですよ。
「月曜日、ミーティング、お願いしますね」と打つと、真っ先にりんなが、「いぇえーい♫」と言ってくれる。そうすると、打合せも楽しみになるじゃないですか。AIが正しい答えを提供するだけでは面白くないですよね。

大村 次回は、りんな以外にも続々登場した、いろいろなAIをご紹介くださるとか。楽しみです。

坪井 はい!いろんな仲間がいるんですよ!