敗戦の陰で証明された、
日本人の2つの優れた能力
大東亜戦争においては、当初日本軍は快進撃を続けていましたが、情報漏えいや作戦目標の不明確さで「ミッドウェー作戦」に大敗北してつまずきます。
また、第2回でふれたように、戦局のターニングポイントとなった「ガダルカナル作戦」では、組織としての学習能力や問題解決力において米軍と大きな差があり、敗北を重ねていきました。
しかし、戦史における前半、1941年12月の真珠湾攻撃からミッドウェー海戦までの約半年間は、日本軍は快進撃の連続だったのです。領地は東南アジアからインド、太平洋各所まで広がり、まさに怒涛の勢いでした。好調だった前半の戦史から、あえて日本人の優れている能力を挙げれば、以下の2つになります。
1.体験的学習による「意図せぬイノベーション」
零戦は徹底的な軽量化で、既存の戦闘機を上回る空戦性能を得ることになり、日中戦争からミッドウェー作戦前後までは高い優位性を誇りました。
戦闘機で警戒中の戦艦を沈めることは不可能である、という考えが常識だった当時、英国の誇る戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」を日本の戦闘機部隊が撃沈し、文字通り世界中を震撼させました。
日本は大東亜戦争初期、これまでにない指標を戦場に持ち込んでおり、意識せずにイノベーションを創造して勝利を得ていたのです。
しかし、自らの「勝利の本質」を深く自覚することができず、以降は初期の成功体験に基づいた戦闘方式を頑なに変えず、結局敗れていくことになります。
2.練磨の文化による「既存思想の最大威力化」
型の反復によって達人を目指す日本の思想は、軍事訓練や実際の戦闘でも適用されたことはすでに第3回でもご説明しました。実は日本人が好む「型の反復で達人を目指す」ことは、すべてが悪い面ばかりではありませんでした。
戦艦同士の攻撃力で勝敗が決まっていた大東亜戦争初期に、東南アジア海域での戦闘で、日本海軍の艦隊は何度も連合軍艦隊に圧勝しています。
艦隊決戦主義(戦艦同士の戦いで勝敗が決まると信じること)が現実に一致していた時期には、日本軍は既存思想を練磨した“最大威力化”で、破竹の勢いで快進撃を続けたのです。
環境が同じか、あるいは勝敗の決まる条件が変化しない時期には、日本人特有の「練磨の文化による既存思想の最大威力化」はその効力を存分に発揮します。これは、現代でも継続されている日本人の強みの1つです。