「時差Biz」による
利用客の減少はわずか2.3%
7月9日から1ヵ月、東京都で「時差Biz」が行われている。これは東京オリンピック開催中の鉄道等の混雑対策の予行として、東京都主導で主要企業が通勤時間をずらす仕組みで、鉄道会社側でも早朝時間帯に臨時特急列車を運行させる等支援している。この結果、東京都都市整備局によれば主要駅の朝ラッシュピーク時に利用客が平均2.3%減少したといわれるが、焼け石に水である。
現状の東京圏の満員電車が輸送力の増強で改善される余地は少ない。JR東日本も当初の計画にあった中央線の三鷹-立川間の複々線化を取りやめた。14年間もかけて2018年に完成した小田急電鉄の複々線化が最後の大工事といわれる。これは今後の少子高齢化社会による労働力人口の減少を見据えると、多額の費用が伴う設備投資の余地は小さいからだ。その意味で、通勤混雑の解消には、もっぱら通勤・通学時間の分散を図る需要面の対策が主となる。
しかし、現行のように、通勤客や企業の自発的な努力だけで分散することには、それに他の通勤客がフリーライドすることで明らかな限界がある。ピーク時の通勤客にペナルティーを課し、逆にピーク時から分散した通勤客にメリットを与えるような仕組みがなければ、持続性のある通勤混雑緩和政策として期待できない。
「混雑料金」を導入すれば、
乗客の行動が変化する可能性も
通勤混雑は、乗客が互いに作り出す公害のような現象である。ある乗客が、すでに混んでいる電車に無理に乗り込むかどうかの判断基準には、その結果、押されることで高まる他の乗客の不快度は考慮されない。これは混雑する高速道路に進入することで渋滞を招く車両についても同様である。この外部不経済の大きさを通勤時間帯で増減する運賃に反映すれば、それを考慮して乗客の行動が変化する可能性がある。これが「混雑料金」の発想である。