子どもの学力は大きく下がっている
学力低下を食い止めるには

佐藤 先生は40年以上教育に携わっていらして、昔の子どもたちと最近の子どもたちを比べて、大きく変わったとお感じになることは?

河端 平均的な学力が10年前、20年前と比べても大きく低下していますね。

佐藤 やはり低下しているんですか!

河端 ええ。偏差値では出てきませんが、点数で比べてみると、上位も下位も一様に学力が低下している状況がわかります。

佐藤 それはスマホとかゲームのせいでしょうか?

河端 それもあると思いますが、より大きいのは、社会や学校が子どもたちに「勉強しろ」と言わなくなったことです。一部の進学校に通う子を除いて、多くの子どもたちは「勉強しろ」と言われる機会がありません。「勉強してどうなるの?」という夢のない社会になっているからなのかもしれません。今、子どもたちのなりたい職業の上位は、芸能人やスポーツ選手に……。

佐藤 ユーチューバーとか。

河端 そうです。勉強しろと言われないし、勉強してもどうなるかわからないから、将来の夢といったら芸能界かスポーツ選手か、ユーチューバーになってしまう。しかしそれは現実的ではありません。勉強した子どもたちが社会に出るときにはさまざまな道が開けていますが、そうではない子どもたちには選択肢があまりないというのが現実です。

佐藤 その子たちが大人になって、自分の子どもを育てるときにはもっと学力レベルが低くなりますよね。

河端 当然そうでしょう。

佐藤 だから教育は大切なんです。確かに今の社会は、「勉強しなさい」という押しつけがダメみたいな雰囲気になっています。また、「勉強ばかりさせると独創性がなくなる」と批判する人も多い。でも独創力って、何もないところから生まれてくるわけじゃないんです。まず基本を身につけて、その上に生まれるものが独創性です。独創性を発揮できる人に育てるためには、まず、きっちりと「型にはめる」ことが大事。具体的には読み・書き・計算だと思っています。