この男はどこへ走っていこうとしているのか。ファンやサポーターを含めた、サッカーに関わる誰もがこんな思いを抱いたはずだ。先のワールドカップ・ロシア大会をもって日本代表からの引退を表明し、新天地としてオーストラリアの強豪メルボルン・ビクトリーFCへの移籍を決めたMF本田圭佑(32)が、カンボジア代表の実質的な監督にも就任して世界中を仰天させた。現役選手と代表監督、それもアジアの中でも弱小国となるカンボジア代表のそれとの「二足の草鞋」を果たして履けるのか。これまでのサッカー人生で本田が貫いてきた独自の哲学をあらためて紐解いてみると、破天荒に映るチャレンジをスタートさせる真意が見えてくる。(ノンフィクションライター 藤江直人)
メルボルンVへの移籍と同時に
カンボジア代表の実質的な監督に就任
一報を聞いた時は、思わず自分の耳を疑った。そして、間髪入れずに唸った。本田圭佑らしいな、と。現役を続けながら、代表チームの実質的な監督を務める。それも日本と対戦するかもしれない、アジアの弱小国の代表監督を。前例がないと言ってもいい決断に、世界中が仰天させられた。
メキシコの名門パチューカからの退団を表明していた本田は、今月6日にオーストラリアの強豪メルボルン・ビクトリーFCへの移籍を発表していた。そして、メルボルンで行われた15日の入団会見へ臨む前に、カンボジアの首都プノンペンへ立ち寄っている。
本田のツイッターにおもむろに動画が投稿されたのは12日。カンボジアに滞在していると明かした上で、間もなくビッグニュースを届けると予告していた。果たして、カンボジアサッカー連盟(FFC)の幹部とともに記者会見した本田は、同国代表の『Head of delegation』に就任したと発表した。
英語による肩書きは、いわゆるゼネラルマネージャー(GM)的な役割を意味する。しかし、実際には異なると本田自身が会見の席で明らかにしている。
「私にとって初めての監督業になります。実際にはメルボルンでプレーするので、すべての試合に関われない可能性がありますが、可能な限りカンボジアのサッカーに関わっていきたい」