奨励品種は残る
自治体の取り組み次第

 誤解に基づく反対で典型的なものは、例えばコメで、「あきたこまち」に代表される都道府県の奨励品種がなくなっては困るという声だ。

 だが、種子法廃止とともに、各地方自治体では、種子法と同様のことを規定した条例を作った。

 種子法では、国が地方自治体に奨励品種の義務を課していたが、これからは各地方自治体が国からの指示ではなく独自に行うとしたわけだ。

 要するに、コメなどの奨励品種は、国(中央政府)の仕事から地方自治体(地方政府)の仕事に変わっただけであり、やる主体が政府であることは変わりなく、役所が違うだけだ。

 コメの奨励品種で、東京など大都市と農業県ではおのずと取り組みが違うので、国が一律に指導する形はもうそぐわない。そこで、各地方の自主性に任せるのだ。各地方自治体で奨励品種がなくなることはない。

 そもそも国のやってきたコメ政策は、減反に追い込まれるなど、これまでのパフォーマンスはよくないから、地方に委ねたほうがいい。

 この国から地方への権限委譲は別の効果も期待できる。コメ生産の実情を見ると、コメや水田も余っていて、農家の後継不足も深刻だ。一方で、輸入については高い関税などでかなり保護されている。

 こうした状況で、権限を地方に委ねるといっても、自治体だけの力では品種開発などに限界があるだろう。「あきたこまち」のようなブラント米はこれまでのように作ればいいが、より民間の力を活用することが重要だ。

 この間、民間企業もコメを開発してきたので、地方自治体によっては、そのような民間米を奨励品種とすることもいいだろう。民間で開発されてきたのは業務用米といわれ、従来から種子法の対象外だった。牛丼、レストラン、コンビニおにぎり、総菜、冷凍食品などに利用されている。

 地方に任せるというのは、地方ごとの多様性を認めることにもつながる。

 これまでは奨励品種は都道府県以外はだめだったが、種子法が廃止されたので、今後は市町村など、各地域の自治体の取り組み次第だ。

 ほかにも、国の法律だった種子法が廃止されたので、その関連予算がなくなるという声もある。

 しかし、種子法関連予算は、すでに20年も前に一般財源化され、農水省の補助金ではなく、総務省の地方交付税交付金の中で処理されている。種子法が廃止されても自治体の一般財源であることは変わらない。

 結論を言えば、制度的には種子法廃止でも自治体の条例でこれまでと同様の枠組みが確保されており、農家にとって条件は変わらない。

 後は、自治体や農家の創意工夫や取り組み次第なのだ。