高齢者の社会進出や
外国人観光客が新たな混雑要因に

 人口が増加するといっても高齢者の比率が高まるだろうから、鉄道利用者は減少するのではないかという考え方もあるだろう。確かに予測でも、総人口に占める生産年齢人口(15~64歳)の割合は2015年の66%から2045年には59%まで低下し、高齢者人口(65歳以上)の割合は18%から25%まで増加すると示されている。日本全体よりは緩やかではあるが、東京にも確実に少子高齢化の波は訪れる。

 しかし、だからといって鉄道利用者が減るとは限らない。というのも女性の社会進出や、定年延長、再雇用など高齢者の社会進出が進み、就業者数は増加傾向にあるからだ。鉄道の利用者数は、ある地域の人口に通勤・通学で移動する人口を差し引きした昼間人口に強く相関する。東京都総務局が2015年に発表した東京都の昼間人口推計によると、東京23区の昼間人口は2035年まで、現在とほとんど変わらない水準で推移するとされている。

 この予測は2013年の人口推計を基に行われたものなので、実際にはこれを上回るペースで昼間人口は増加するものと考えられる。また高齢者の外出頻度の増加や、訪日外国人旅行者の増加により、昼間人口には含まれない買い物・観光などの私事の来訪者も増加傾向にある。リモートワークの大胆な推進などライフスタイルの大転換が起こらない限り、20~30年スパンでの鉄道利用者の減少は考えにくい状況だ。

 首都圏の鉄道各社も、ここまで予想が大幅に上方修正されるとは思っていなかっただろう。

 大都市圏の鉄道整備は、交通政策審議会(旧運輸政策審議会)の答申に基づいて進められる。そして、この答申で検討のベースとなるのが、都市開発計画と人口推計である。

 例えば、1985年の運輸政策審議会第7号答申では、東京都市圏の拡大と郊外人口の増加がもたらす通勤路線の混雑解消を目的として、JR埼京線、JR京葉線、りんかい線など貨物線の旅客化、東葉高速鉄道、埼玉高速鉄道、北総鉄道、つくばエクスプレスなど新線建設が検討され、都心部では地下鉄南北線や都営大江戸線の整備計画が具体化した。

 しかし、検討から開業まで長い時間を要する鉄道整備には誤算がつきものである。

 上記の路線計画は1990年代から2000年前後にかけて実現し、混雑緩和と利便性向上に貢献しているのだが、1985年から2000年にかけての15年間で東京を取り巻く環境は激変した。

 バブル崩壊は日本経済に深刻な影響を及ぼしたが、一方で地価と金利の下落は都心再開発を促し、ドーナツ化現象から都心回帰へと人々の流れは反転。郊外の開発ペースは落ち、利用者数が予測をはるかに下回ったことで、経営危機に瀕する郊外路線が続出した。

 こうした状況のもとで検討が進められたのが、2015年を計画目標に据えた2000年の運輸政策審議会第18号答申である。

 第18号答申では1990年代の人口推計をベースに、2015年の東京圏の鉄道利用者は1995年と比較して1.5%の微増、23区への流入交通量は6%程度の増加にとどまると見込んでいた。

 これまでの鉄道整備計画は郊外から都心へ集中する通勤輸送への対応を重視していたが、これを機に都心一極集中を改め、副都心や周辺核都市への都市機能分散を進めるべく、拠点間のネットワーク強化へと舵を切った。

 これにより湘南新宿ラインや上野東京ライン、東急東横線の地下鉄副都心線乗り入れなど直通運転の拡大や、ICカード乗車券の普及、バリアフリー設備の整備推進など鉄道サービスの質的向上が進められた。