「心理的余裕」を失うと危機的状況を招く

 それどころか、マネジャーが「プレイヤーとしての仕事」に忙しくて、時間的・心理的な余裕がないと、一人ひとりのメンバーの様子を観察して適切なサポートをしたり、モチベーションをメンテナンスする「マネジャーとしての仕事」がおろそかになってしまいます。

 また、メンバーと丁寧にコミュニケーションを取ることができない結果、「いいから、言ったとおりにやっておいて」などと一方的に指図をしてしまう機会も増えるでしょう。これが、さらに状況を悪化させます。人は指図されると能動的に動かなくなります。「ならば、指示されたことだけやればいい」とモチベーションを下げるメンバーを生み出してしまうのです。

 極端な場合には、モチベーションを下げたメンバーを前に、「自分はこんなに頑張っているのに……」などといった感情的な発言をしてしまうこともあるでしょう。そうなるとメンバーはますます委縮してしまい、チームとしての機能を果たさなくなってしまうおそれすらあるのです。

 その結果、平均5だったメンバーの戦力が4に落ちると、たいへんなことになります。マネジャーが12レベルで頑張り続けても、合計はなんと12+4×5人=32。チームの総戦力は当初より落ちてしまうのです。

 ただでさえギリギリいっぱいまで頑張っているマネジャーはこのマイナス分を補うために、さらにムリをしなければならなくなるでしょう。場合によっては、燃え尽きてしまうことがあるかもしれません。まさに悪循環。プレイングマネジャーが「プレイヤーとしての仕事」に重点を置いて頑張りすぎることは、非常に高いリスクを伴うのです。