「頑張るマネジャー」がチームの士気を下げる

 単純化したモデルで考えてみましょう。
 プレイングマネジャーと5人のメンバー、計6人で構成されるチームがあるとします。仮に、プレイングマネジャーの戦力レベルが10で、メンバーが平均5だとすれば、チーム全体としては10+5×5人=合計35の戦力があることになります。チーム目標が仮に37であるとすると、このままではチームの目標を達成するのが難しいでしょう。この場合、マネジャーはどうすればいいでしょうか?

 おそらく、多くのマネジャーは、「プレイヤーとしての仕事」に比重を置いて、チームに足りない戦力を自ら補うという選択肢が思い浮かぶのではないでしょうか?

 なぜなら、成功体験の少ない「マネジャーとしての仕事」よりも、多くの成功体験をもつ「プレイヤーとしての仕事」のほうが、結果を出しやすいですし、やる気も湧いてくるからです。そして、もともと戦力レベルが10なのに、自らにムチを打ってレベル12の仕事をしようとするわけです。

 特に、「最も戦力の高い自分が努力すれば解決できる」「マネジャーである自分が頑張るのが当然」と考えるような、自負心や責任感の強い人であればあるほど、そのような選択をしがちだと思います。

 こうしてプレイングマネジャーが懸命の努力をした結果、チーム全体の戦力レベルが12+5×5人=37に上がり、ギリギリのところでこのチームは目標を達成できたとします。きっと、マネジャーはホッと胸をなでおろすとともに、自らにムチを打って頑張った自分を褒めてあげたくなるでしょう。

 ところが、この選択には深刻な副作用が伴います。
 マネジャーがひとりで頑張って成果を上げ始めると、かえってチームの「モチベーション」を下げるという結果を招くのです。マネジャーが「自分がなんとかしなければ」と考えることは、裏返せば「メンバーに期待していない」ということにほかなりません。メンバーは「自分は期待されていないのか?」「だったら、マネジャーが頑張ればいい」と解釈し、仕事に対するモチベーションをどんどん下げていってしまうのです。