マネジメントには「驚くべき力」がある

 では、「マネジャーとしての仕事」に重点を置けばどうなるでしょうか?
 先ほどと同じモデルでシミュレーションしてみましょう。

 マネジャーはあえてメンバーと同じレベル5の仕事をするに留め、できる限りマネジメントに注力するとします。
 メンバーをよく観察して、壁にぶつかっているメンバーがいれば適切なサポートをする。メンバーが成長したら、すかさず具体的にほめる。マネジャーがやっていた仕事を少しずつ任せたり、各自の得意分野に合わせて担当業務を見直す。メンバーの手間となっている作業を効率化するために上層部にIT投資を持ちかけたり、チームの業務を精査して不要な仕事を削減する……。

 そのような「マネジャーとしての仕事」に注力した結果、メンバーが成長したり、力を発揮しやすくなって、平均戦力が5から6に上がると、マネジャーがレベル5であったとしても、5+6×5=35と、当初と同じ戦力となります。この数字だけをみると現状維持にみえますが、中身はまったく異なります。チームにグッドサイクルが回り始めていることを見逃してはなりません。

 マネジャーに頼りにされ、自分の成長を実感し、チームに貢献している充実感を得たメンバーは、モチベーションを高め、成長軌道に乗り始めますから、一人ひとりの戦力レベルは6から7へ、7から8へと上がっていきます。それに応じて、チームの戦力レベルも35→40→45と、グングン伸びていくのです。このように、「マネジャーとしての仕事」に注力することで、チームの目標の37を大きく上回る成果を上げながら、以前よりも「短い労働時間」で目標を達成し続けられるチームへと、自然と変わっていくのです。

マネジャーが頑張りすぎると、逆に「チームの生産性」を下げる理由

 これこそが、「マネジメントの力」です。
 孤独にムリを重ねてレベル12の仕事をするマネジャーが疲弊していくのと、真逆の現象を起こすことができるのです。
 ですから、プレイングマネジャーは、決して「プレイヤーとしての仕事」に比重を置いてはなりません。プレイングマネジャーの本職は、あくまでマネジメント。プレイングマネジャーが、「マネジメントに比重を置く働き方」を実現することが、生産性の高いチームを生み出す第一歩なのです。