キャリアの大三角形を描こう

 実際には、図のような三角形を描くイメージです。この図は大事なので、社会に出てからも難局に遭遇するたびに眺めてください。決して100万人に1人の存在になることを諦めないように。

 まず、図の1のように、たとえば20代の5~10年で三角形の起点となる「左足の軸」を固めましょう。

 バスケットボールで言えば、ピボットするときの軸足です。1万時間かけていい。これで100人に1人になれます。

 営業の仕事でも、経理の仕事でも、続けられる仕事をマスターします。最初は転職を繰り返すようなことがあったり、上司に恵まれなかったりするかもしれませんが、続けられる仕事を1万時間続けたら、まずステージ1はクリアです。

 君もスタート地点に立ちました。ここからは、三角形を15年から30年くらいかけて形作るゲームのようなものだと思ってください。

 次に、2のように、30代の5~10年かけて、三角形の底辺を作るべく「右足の軸」を固めます。ここでも1万時間かければ100人に1人のレアさが確保できますから、掛け算すれば、ここまでで1万人に1人の希少性がゲットできることになります。

 営業の仕事をマスターしたら、会社のなかで次に宣伝・広報に異動させてもらう手もあるし、経理の仕事からスタートしたんだったら、財務を覚えてから、税理士や会計士の資格取得を狙う手もあるかもしれません。

 いずれにせよ、両方の軸足を固めるためには、1と2は隣り合った仕事でもいいと思います。

 ここまでで、あなたのキャリアの底辺部ができましたから、ライフラインが固まったとも言えるでしょう。食っていける下地ができたということです。

 ここまでくれば、その技術で「稼げる大人」になれているはずです。

 さらに次は、4のように、もう1万時間かけて、たとえば40代から50代にかけて三角形の頂点を作って、キャリアの大三角形を形作ります。そうするとこの三角形の希少性は、100分の1×100分の1×100分の1で100万分の1を達成することがわかりますよね。

 ただし、ここに至るには、3のような試行錯誤が当然必要になってきます。3歩目の踏み出しは大事なので、こっちかな、あっちかなと迷っていいのです。

 じつはこの3歩目は思い切り遠くに踏み出して、三角形の面積を大きくするのがコツです。なぜなら、この三角形の面積が、そのまま君の希少性の度合いを表すからです。

 ただ、たいていの大人は1、2の足場にこだわりすぎて、大きく踏み出すのをためらってしまいます。すると、三角形の高さが出ないから面積が小さくなり、せっかくの希少性が薄らいでしまうことになりかねません。

 3歩目の踏み出しには、この勝負の前までに君が蓄積した情報編集力(正解がない、もしくは正解が1つではない問題を解決する力)が生きてきます。ここにこそ、編集センスが生きてくるのです。そして、ちょっとした勇気と無謀さも。

 ここが、人生最大の山場になるかもしれません。君にとってはまだ先の話ですが、楽しみにしておいてください。でも、君のご両親にとっては、いま、まさにその局面に立っている可能性も高いんですよ。