米国では減少しているのに
なぜか日本では「大腸がん」が減らない
日本人のがんの死亡率と罹患(りかん)率は、単純に総数で見ると年々増加していますが、その主たる原因である人口の高齢化の影響を除いた年齢調整率を用いると、ほとんどのがんで死亡率は減少しています。しかし、大腸がん(他に膵臓がん、悪性リンパ腫)に関しては、年齢調整をしても男女ともに死亡率は減少していません(ちなみに子宮がんは年齢調整をしても増え続けています)。
大腸がんの死亡率は肺がんに次いで2位、罹患率は胃がんに次いで2番目に高く、特に女性ではがん死亡率のトップになっています。また、日本の高齢化率は25%を超え世界で最も高いのですが、同様に高齢化率が20%超であるドイツ、イタリア、フランスなどでは、がんの死亡率は増えていません。
そして、本来、大腸がんは数あるがんの中でも最も管理しやすいものの1つであるのに、日本では死亡率を減少させることができていないのです。
もともと大腸がんの死亡数が多かった米国は、国家的な対策により大腸がんの死亡数を減少させることに成功しています。一方で日本は、増加の一途をたどっています。後で触れますが、日本の検査技術や治療技術は国際的にレベルが低くはありません。それゆえに、特に消化管の治療を専門とする日本の医師たちの多くは、「大腸がんで命を落とすのはもったいない」「大腸がんで命を落としてほしくない」と、日々感じています。
しかし、大腸がんは最も予防しやすく早期発見治療しやすいがんであることは、医師にとっては常識にもかかわらず、一般の方々にはあまり認識されていないようです。
大腸がんは最も予防・早期発見しやすいがん
「内視鏡検査」は一石二鳥の検査法
大腸がんは、高生存率の3つの要素である「早期発見が可能、進行が遅い、治療法が確立している」を全て満たすがんです。膵臓がん、スキルス胃がんや肺がん(小細胞がん)などは、発見が難しく進行が早いので「難治性がん」と呼ばれていますが、大腸がんはこれらのがんに比べれば、発見も治療も非常に行いやすいがんなのです。