「寝耳に水だが、違和感はない」。それが総務省内部の最初の受け止めだった。
菅義偉官房長官が8月21日の札幌市内の講演会で、携帯電話料金について「4割程度下げる余地がある」と発言したのは総務省にとっても突然だったが、携帯料金の高止まりがクローズアップされたことが、同省への追い風になったのは間違いない。
政治が携帯料金に介入するのは2度目になる。2015年9月に安倍晋三首相が経済財政諮問会議で「家計負担の軽減」のため、携帯料金の引き下げを指示したのが最初で、以来、総務省は、高額キャッシュバックや実質0円端末の規制に踏み切ったほか、ライトユーザー向け料金プランの導入や、MVNO(格安スマートフォン)の参入を促す方針を相次ぎ打ち出してきた。
それでも、依然として携帯料金の値下げは進まない。総務省の家計調査によると、携帯電話の通話料は17年に初めて年間10万円を突破しており、携帯の家計負担は軽減されるどころか増しているのが実態だ。
今回は、15年のときのように官邸から総務省に指示があったわけではない。すでに開催が決定していた総務省の情報通信審議会の2日前になって、菅氏が国民に受けのいい携帯料金の値下げを打ち上げた格好だが、この発言で総務省は勢いづいている。