武輪水産の「鯖スパイシーマリネ」
武輪水産の「鯖スパイシーマリネ」を使ったパスタ

 商品を開発、販売するアバランチは缶詰とはまったく無縁の広告制作会社。設立20周年の記念品として作ったサバ缶が大好評となり、ラインナップを追加し商品化。自社サイトで販売をスタートした。1200円(税別)という日本一高いサバ缶にもかかわらず、全国から注文が殺到。初回生産分は1ヵ月半で完売した。

 サバの定番・しめさばも進化中だ。しめさばを主力商品とする青森県八戸市・武輪水産の「鯖スパイシーマリネ」は、黒こしょう、マスタード、コリアンダーなどの粗挽きミックススパイスの香りと食感の洋風のしめさば。同社によればこれまでしめさばの購入層の多くを占めていたのは男性だったが、この商品に関しては30~50代女性がメインで、洋風の食事に合わせやすい、ワインに合うと大好評だ。

「サバデシュ」
吉久保酒造のサバ専用の日本酒「サバデシュ」

 サバ人気は、サバ以外まで波及し、今年3月には、茨城県水戸市・吉久保酒造からサバ専用の日本酒「サバデシュ」が発売された。

 これは昨年、銚子で開催された「鯖サミット」に参加した吉久保博之社長が、サバ人気に驚き、刺激を受けて開発した商品で、あらゆるサバ料理に合い、美味しさを引き立てる味わいを追求。ラベルにサバのイラストがあしらわれたスタイリッシュなデザインの日本酒は、発売直後から話題となりメディアからの取材が殺到。全国のサバファンや、サバを扱う飲食店に瞬く間に情報が拡散し、全国から注文が入った。現在、販売数は10万本を突破。そして台湾、オーストラリアなど海外への出荷もスタートしたという。

日本人にとって「当たり前」の
サバの魅力を「再発見」

 一連のこの流れを振り返ってみると、サバという「当たり前」すぎる魚の可能性が、さまざまなかたちで「再発見」、そしてその魅力が引き出された結果のように思う。

 サバの水揚げが多い町では「下魚」として扱われがちだが、大都市では歓迎され、アレンジを施し、おしゃれな商品に仕上げれば、若い女性の心をつかんで新たな消費者を獲得する。

 存在自体が「当たり前」のサバも、今の時代に欠かせない「食べる意義」を訴求すれば「スーパーフード」になる。

 目の前の当たり前は、大いなる「可能性」を秘めていた。これが、サバブームのもうひとつの側面ではないだろうか。

(食文化ジャーナリスト/薬膳アテンダント 池田陽子)