就活生が陥りがちな
「空前の売り手市場」」という誤解

 学生にとって象徴的な間違いを指摘しておくと、「現在は空前の売り手市場だ」という錯覚がある。確かに求人サイトが発表する新卒の求人倍率は1.74というように、歴史的に見れば非常に高い水準にある。数字通りなら、内定がひとりあたり1.7個はもらえるように思える。

 ところが実際は、一部の有力な学生が内定をいくつももらう一方で、多くの学生は1つも内定がもらえないという状態が発生する。これは日本人の平均貯蓄額が1820万円という数字と同じで、平均は1820万円でも実際に1820万円を貯蓄している世帯は非常に少ない。数億円の貯金を持っている一部の富裕層とそうでない層を一緒に平均するから、そういう勘違いが起きる。

 さらに、全体の求人倍率が1.74でも、銀行やITサービス企業のような人気業種の求人倍率は0.5未満だ。つまり内定をもらえるのは、平均しても2人か3人に1人である。同様に従業員数5000人以上のいわゆる大企業の求人倍率も0.4未満。実は狭き門なのである。

 大学卒業者は42万人いるのに対して、新日鐵、ドコモ、三菱商事、東京ガスといった人気企業の採用枠は150人から400人程度に過ぎない。就活サイトの人気ランキングの上位200社の採用枠を合計しても、約5万4000人分にしかならない。例年これらの大企業はほぼ採用枠を埋めて採用活動が終わるとはいえ、それでも人気上位企業に入社できる学生は全体の1割強にしかならない計算だ。

 私のように、新卒でコンサルティングファームに入るというキャリアは、私の学生時代と違い、今では断トツと言っていいほど人気が高い。多くの学生が就活期間に力を入れて活動するのだが、採用数が少ないため大半の学生は内定がもらえないことになる。

 結局のところ、学生にとって本当の就職活動は、自分が行きたい有名企業に何社もお断りをもらって、その後に接触が始まる「本命企業」からである。だから本当は、経団連に所属するような有名企業がこれまでの解禁日よりも早い時点で採用活動を終えてくれるほうが、多くの学生にとって就活により力を入れやすくなるはずである。