たとえば日本消費者連盟が昨年7・8月に実施した「香害110番」の相談内容を見てみよう。そこには次のような悲鳴や訴えが寄せられている。

 その主なものはこういった声だ。

「駅のホームで制汗剤を使われ、めまいがした」
「公共トイレの消臭剤がきつくて入れない」
「通勤電車に乗ることもできず、職場には柔軟剤使用者がいるため、退職を余儀なくされ、生活は困窮している」
「大学病院に通っているが、医師・看護師にも香りつき柔軟剤を使っている人がいて、辛くてたまらない」
「老人福祉施設で働いているが、施設内が芳香剤・洗剤・制汗剤などのニオイがきつく、いつまで仕事を続けられるか、わからない」
「先日訪れたホテルのラウンジは人工香料が満ちていて、利用できなかった」
「日本航空の国際線を利用した際、おしぼりのアロマサービスで被害を受けた」

 両国には違いもある。

 その一つが、日本で苦情が最も多かった「近隣の洗濯物のニオイ」がアメリカではほとんど問題になっていないことだ。

 背景にあるのは、住環境や生活習慣の違いだろう。日本の多くの住居は狭く、洗濯物はベランダや室内で干す人が多い。これに対してアメリカでは、比較的広い住宅に住み、洗濯物は大型の乾燥機で乾かすことが多いからだ。

 いま日本では、1000万もの人々が「香害」に苦しんでいる。その現実を、政府も自治体も、医療関係者や教育関係者も直視してほしい。実態調査や対策の検討を急ぐときだ。

(注4)デンマークの研究者が2012年に、QUEESIを用いた調査を同国で実施した。それによると、「化学物質曝露に対する反応」が35点以上で「日常生活の支障の程度」が14点以上であれば過敏症と判定できるとし、デンマーク市民の8.2%がこの条件を満たしていた。
 この条件を日本の12年調査に当てはめると、7.5%の人が該当した。つまりこの時点では、日本の過敏症の可能性がある人の割合はデンマークよりわずかに低かったが、近いレベルだった(東賢一・内山巌雄「化学物質過敏症の実態について」『AROMA RESEARCH No.54』所収)。

(ジャーナリスト 岡田幹治)